三菱電機は2022年1月17日、世界各国の衛星測位システムを利用できる4周波数帯対応衛星測位端末用アンテナで「世界最小サイズを実現した」(同社)と発表した。
三菱電機は2022年1月17日、世界各国の衛星測位システムを利用できる4周波数帯対応衛星測位端末用アンテナで「世界最小サイズを実現した」(同社)と発表した。設置面積で競合品比25%程度の小型化を実現するとともに、対応周波数を拡張、受信精度の向上を図った。数年内に実用化し、各種ドローンや小型トラクターなどへの搭載を目指す。
三菱電機は、センチメートル級の測位補強サービスを提供する準天頂衛星システム「みちびき」などに対応した高精度アンテナの開発を実施し、2018年に4周波数帯対応衛星測位端末用アンテナをリリースしていた。今回、開発した同アンテナは2018年リリースの従来品をさらに小型化しつつ、性能、精度を高めたものになる。
小型化では、従来は樹脂側面だけだったアンテナ素子配線を、MID*を用いて樹脂天面にも形成。アンテナ素子の占有空間を増やすことで、アンテナの小型化と高性能化を同時に実現。サイズは筐体を含んで59×59mm、高さ33mmと「水平面、高さともに、最も小サイズの競合品よりも小サイズを実現した」(同社)とする。
*MID:Molded Interconnect Device。三次元形状の樹脂成形品の表面に電極や回路などを形成した部品
性能においても、高周波数域での対応周波数帯域が拡大。対応する「L1」「L2」「L5」「L6」という4つの周波数帯のうち、最も周波数の高いL1において、対応帯域が従来比3倍に拡大したという。対応周波数の拡大により、ロシアの衛星測位システム「GLONASS」での受信可能衛星数が拡大した他、英国の測位補強サービス「INMARSAT」が新たに利用できるようになったとする。
さらに、側面のアンテナ素子をループ状、天面のアンテナ素子を直線状と、放射メカニズムが異なる形状で配線することにより、アンテナ背面方向からの信号受信を弱めることに成功。これにより、信号処理技術で補正することが難しかった地面からの反射波(マルチパス波)の受信(バックローブ)が低減され、測位精度向上が期待できるとする。「バックローブ低減効果を検証したところ、L2/L5/L6帯で、FB比(正面方向と背面方向のアンテナ利得比)が約7dB(約5倍)改善した」とした。「これまでバックローブ低減は、アンテナ背面に電波吸収体を貼るなどの手法が一般的だったが、アンテナの大型化を招いた。直線状アンテナとループ状アンテナの、正面方向では強め合い、背面方向では弱め合うという性質を利用して、アンテナを大型化せずにバックローブを低減できた」(同社)
三菱電機では、今後、屋外での実証実験による測位精度評価を実施し、数年後の実用化を目指す方針。その上で、「各種ドローンや小型トラクターなどさまざまな移動体への搭載を進めていきたい」(同社)とした。
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