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界面の魅力と日本半導体産業の未来 〜学生諸君、設計者を目指せ!湯之上隆のナノフォーカス(47)(2/7 ページ)

» 2022年02月24日 11時30分 公開

電子デバイス界面テクノロジー研究会の歴史

 トランジスタのSiO2/Si界面の研究は、古くて新しい問題である。図2に示すように、日本国内に限ってみても、1965〜1968年に東京大学(当時)の菅野卓雄先生の提唱により毎月1回、「シリコン酸化膜研究会」が開催された。1985年からは、応用物理学会薄膜・表面分科会主催で「シリコン酸化膜研究会」が開催されるようになった。

図2:電子デバイス界面テクノロジー研究会に至るまでの歴史[クリックで拡大] 出所:岡田健治(電子デバイス界面テクノロジー運営委員長/タワーパートナーズセミコンダクター(株))、2021年秋季応用物理学会、『半導体デバイスを支える絶縁膜およびその界面の物理〜電子デバイス界面テクノロジー研究会の26年〜』のスライドから抜粋

 そして1996年1月に「極薄シリコン酸化膜の形成・評価・信頼性研究会」が開催され、それが本研究会の第1回目となった。その創立と運営に尽力されたのが、服部健雄先生(当時は武蔵工業大学教授、現在は東京都市大学名誉教授)と安田幸夫先生(当時は名古屋大学教授、現在は名古屋大学名誉教授)のお二人だった。

 そして、本研究会は三つの時期を経て(名称を変えながら)今日に至っている(図3)。

図3:電子デバイス界面テクノロジー研究会の歴史[クリックで拡大] 出所:岡田健治(電子デバイス界面テクノロジー運営委員長/タワーパートナーズセミコンダクター(株))、2021年秋季応用物理学会、『半導体デバイスを支える絶縁膜およびその界面の物理〜電子デバイス界面テクノロジー研究会の26年〜』のスライドから抜粋

 第I期は、前身と同じく「極薄シリコン酸化膜の形成・評価・信頼性研究会」と呼んでおり、当初はSiO2ゲート酸化膜の発表件数が多かったが、次第にHigh-k絶縁膜の研究が増えていき、2004年にはそれが過半を超えるようになった。

 そこで、2005年からは第II期として、「ゲートスタック研究会」と名称を変更した。High-k/Metalゲートは2010年に実用化されたが、それとともにHigh-kの発表件数は減少した。ところが新たにGe、SiC、GaNなど、新たな半導体材料に関する発表件数が増えてきた。

 それを受けて2016年からは第III期として、「電子デバイス界面テクノロジー研究会」に名称を変更し、現在に至っている。

第27回 電子デバイス界面テクノロジー研究会の概要

 2022年、第27回目となった本研究会はリモートで開催され、チュートリアル講演が1件、基調講演が3件(うち1件を筆者が担当)、国内外の招待講演が8件(国内7件、海外1件)、一般口頭講演が11件、ポスター発表が19件、合計42件の発表があり、加えてパネルディスカッションが行われた。本研究会開始時点での参加者は134人だった(プログラムはこちらから)。

 このように、本研究会の規模は決して大きくはない。しかし、基調講演者や招待講演者は、その道の第一人者が登壇しており、非常にレベルが高いと思った。また、半導体の研究を行っている大学生の発表が多く、若さと活気が感じられた。

 そして、大学生など30歳以下の若手をエンカレッジするために、さまざまな工夫を凝らしていた。まず、本研究会の設立と運営に尽力されたお二人の先生の名前を冠する「安田賞」と「服部賞」を、口頭発表およびポスター発表それぞれに授与した(受賞者一覧はこちら)。

 また、2日間の研究会を通じて、最もたくさんの質問を行った学生を「研究会活性化奨励賞」として表彰した。筆者は毎年あちこちで講演するが、学生(というより日本人)が質問をためらう傾向にあると感じている。従って、これは非常に面白い取り組みだと思った。

 さらに、パネルディスカッションでは、半導体を研究している学生48人のアンケート結果が示され、業界で活躍している4人のパネラーが学生へのアドバイスを含むショートプレゼンを行った。若手研究者に対するアドバイスをパネルで取り上げた例は見たことがあるが、これから就職する学生に対するメッセージをテーマにしたパネルは斬新だと感じた。そしてこれも、社会人と学生の“界面”問題の一つかもしれないと思った。

 以下では、本研究会で筆者が注目した二つの講演と上記パネルを取り上げる。

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