今回は、「電子デバイス界面テクノロジー研究会」の歴史と、同研究会が行った、半導体を研究している学生48人へのアンケート結果を紹介する。アンケート結果は、非常に興味深いものとなった。
半導体デバイスには、さまざまな「界面」がある。というより、半導体は界面で構成されていると言っても過言ではない。その代表例が、トランジスタのゲート絶縁膜とシリコンの界面であろう。
また、半導体プロセスにも界面がある。ドライエッチングやCVDはプラズマという気相と固体との界面反応であるし、コータ・デベロッパや洗浄は液体と固体との界面反応である。
さらに、界面があるのは半導体だけではない。人間社会にも、国境や人種など多種多様な壁があり、これらも一種の界面といえるだろう。
このように半導体にも人間社会にも、不思議で魅力的な界面が存在する。しかし、多くの問題が界面で起きることも事実である。従って、半導体を高速に動作させたり、高度なプロセス技術を開発したり、米中の分断のような境界問題を解決するには、“界面制御”が極めて重要になる。
筆者は2022年1月28〜29日の2日間、オンラインで開催された「第27回 電子デバイス界面テクノロジー研究会(以下、本研究会)」に参加し、29日に『人類の文明に必要不可欠な半導体−2050年の世界半導体市場予測−』のタイトルで基調講演を行った。
筆者は、1987〜2002年の間、日立製作所や旧エルピーダなどで、ドライエッチングの技術開発に従事し、2000年に工学博士を取得した。その学位論文の半分以上の内容が、ドライエッチングに使うプラズマによるSiO2/Si界面へのチャージングダメージの研究だった。
このような経歴もあって、“界面”には人一倍思い入れがある。その筆者が本研究会で基調講演を行ったのも、“界面”が引き寄せた何かのご縁なのかもしれない。そして、この研究会は、とても面白かったのだ。そこで、本稿では、この研究会を取り上げる。
まず、本研究会の歴史を紹介する。次に、第27回の本研究会の概要と筆者が注目した発表2件について説明する。さらに、初日28日午後に行われたパネルディスカッションについて詳述する。このパネルでは、半導体を研究している学生48人のアンケート結果が示され、半導体業界などで活躍している4人のパネラーが学生へのアドバイスを含むショートプレゼンを行った。
筆者は、今どきの大学生がどのような集合意識を持っているかということに、非常に興味を覚えた。現在、国内外で半導体が注目を集めている。これは一時的なブームではなく、半導体が人類の文明を支えていることをコロナがあぶり出した結果だと思っている。その半導体に対して、次世代を担う若者がどのような姿勢で取り組んで欲しいかを筆者も述べてみたいと思う。
結論を先取りすると次のようになる。日本半導体産業には致命的な欠陥がある。それは、世界レベルの設計ファブレスが無いということである。例えば2021年の世界半導体売上高ランキング(にTSMCとキオクシアを加えたもの)を見ると、米Qualcomm、台湾MediaTek、米NVIDIA、米AMDの4社のファブレスがいずれも対前年比で50%を超える高い成長率を示している(図1)。また、2001年からの売上高推移を分析した結果、MediaTekが33.6倍、Qualcommが23倍とすさまじい成長を遂げていることがわかった。そのため、筆者から学生諸君には「世界レベルの設計者を目指せ!」というメッセージを送りたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.