日本では、先端半導体工場の新増設を支援する改正法が2021年12月20日、参議院本会議で与党などの賛成多数で可決し、成立した。その改正法によれば、補助金は国立研究開発法人の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に設置する基金から複数年にまたがって拠出する。その基金は、2021年度補正予算でまず6170億円を計上した。
そして、補助金を投入する対象として、第1に日本政府が誘致したTSMC熊本工場が挙げられている。加えてMicron広島工場とキオクシア四日市工場も候補に挙がっている。
筆者は、税金が含まれる補助金を上記半導体工場に投入することに賛同できない。また、上記工場に補助金を投入しても、世間で言われているような「日本半導体産業の復活」などにつながることはない。どうしても補助金を使いたいのなら、もっと有効に使うべきだ。
2000年以降の半導体売上高ランキングから明らかなように、日本には致命的に欠けているものがある。それは、世界と戦えるファブレスが存在しないということだ。日本全体を見渡してみても、ザインエレクトロニクス、メガチップス、ソシオネクストぐらいしか思い浮かばない。しかも、これら日本のファブレスが売上高ランキングの上位に登場することはない。
筆者は、日本政府が本気で日本半導体産業の復活を推し進めたいのなら、ファブレスの育成こそ、第1に行うべき政策であると考える。
冒頭の図1で、2021年の売上高ランキングのトップ企業のうち、ファブレスの4社が対前年比で50%超の高成長を遂げたと述べた。以下では、さらに驚くべきファブレスの成長性を示したい。
図16は、主な半導体メーカーの2000〜2021年の売上高の推移を示したグラフである。2016年から2018年にかけてメモリ市場が急成長したが、2018年にピークアウトした。それに連動して、Samsung、SK hynix、Micron、キオクシアなどのメモリメーカーの売上高もピークアウトし、メモリ不況に突入した。
ところがメモリ不況は2019年に底を打ち、その後、急回復を遂げていく。そして、メモリメーカー以外の多くの半導体メーカーも、2019年を境に売上高が急拡大している。
ここで、主な半導体メーカー各社について、ITバブルが崩壊した2001年の売上高で規格化したグラフを書いてみた(図17)。その結果、最も成長したのは台湾のMediaTekで何と33.6倍、2位がQualcommの23倍、3位がBroadcomの16倍となっている。
この3社は全てファブレスである。1位のMediaTekとQualcommはスマートフォンのアプリケーションプロセッサ(AP)で競合している。また、QualcommとBroadcomは通信半導体を主力としている。
つまりこの3社のファブレスは、携帯電話やスマートフォンの普及、通信半導体の成長を追い風にして、この20年間で飛躍的な成長を遂げたと言える。
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