大阪大、モデル化した熱流を原子スケールで可視化:新数値解析手法で熱輸送量を算出
大阪大学は、古典分子動力学法に基づき、原子スケールの熱流構造を可視化する数値解析技術を開発した。原子スケールにおける熱輸送のメカニズム解明と制御が可能となる。
大阪大学大学院工学研究科の藤原邦夫助教(兼JSTさきがけ研究者)と芝原正彦教授らの研究グループは2022年3月、古典分子動力学法に基づき、原子スケールの熱流構造を可視化する数値解析技術を開発したと発表した。原子スケールにおける熱輸送のメカニズム解明と制御が可能となる。
熱輸送デバイスの創製や、エネルギーを有効活用するためには、原子スケールにおける熱輸送のメカニズム解明と制御が重要となる。微細化が進む最新の電子デバイスにおいても、放熱対策は大きな課題である。ところがこれまでは、原子スケールにおいて熱流を空間分布として可視化する手段がなく、熱輸送状態を直感的に把握することはできなかったという。
原子スケールにおける熱輸送現象の解明には、分子動力学法に基づく数値解析が有効といわれてきた。しかし、原子スケールにおける熱流の空間的な構造は、これまで明らかにされていなかった。
固体−液体界面における2次元熱流構造。左から2つはぬれ性が悪い場合、右から2つはぬれ性が良い場合 出所:大阪大学
そこで研究グループは、古典力学のみに基づく分子動力学法である「古典分子動力学法」を用い、単原子スケール以下の局所領域で定義される熱輸送量を算出するための数値解析手法を新たに開発した。これにより、固体と液体の界面において単原子スケールの局所で熱流を算出し、3次元的な空間分布として特定することに成功した。計算モデルとしては、Lennard-Jonesポテンシャルで相互作用する原子、分子を用いた。
固液界面内における3次元熱流構造。上図はぬれ性が悪い場合、下図はぬれ性が良い場合 出所:大阪大学
これらの解析結果から、原子スケールにおいて熱量は、温度勾配方向に対して一様ではなく、指向性を有することが明らかとなった。しかも、巨視的な熱流に比べ、単原子スケールでは数倍の熱流が生じていることも分かった。
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