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米半導体支援策、成功には組み立て/テスト強化が必須IC基板分野は「アジアに20〜25年遅れ」(2/3 ページ)

» 2022年03月31日 10時30分 公開
[Alan PattersonEE Times]

組み立て/テストメーカー不足が計画の妨げに

 世界最大の組み立て/テストメーカーであるASEとAmkorは、全ての自社工場をアジアに置いている。両社とも、TSMCやSamsung Electronicsのように、最近米国で数十億米ドル規模の投資を行っているアジアの半導体メーカーの後に続くつもりはないとしている。米国における組み立て/テストメーカー不足は、国内に安全性の高いエレクトロニクスサプライチェーンを構築する計画において、妨げになるだろう。

 Kelly氏は、「われわれはサプライチェーンを広げようとしているが、大規模エコシステムの問題を解決するための取り組みを進めなければ、事態が悪化することになるだろう」と指摘する。

 「IntelやTSMC、Samsungは2024年に、米国内の半導体生産量を増加させる予定だとしているが、その頃にはシリコンウエハーを飛行機でアジアに出荷しなければならなくなる。われわれは、サプライチェーンを広げようとしているのであって、短縮しようとしているのではない」(Kelly氏)

 米国内で組み立て/テストを始動させることは、既存の生産量が急増すればいいという点で、IC基板に関する重要な問題とは異なっている。北米には、OSAT(半導体後工程受託製造)施設が25以上あるが、年間売上高ランキングのトップ20には1つもランクインしていない。

 Kelly氏は、「OSATにとって、最先端のパッケージング分野に参入して技術を構築し、奮起しながらより良い方法で物事を進めていくことは、簡単なことだ。これは、資金とインフラの要素が大きく、必ずしもスキルやノウハウが不十分であるということではない。OSATの問題は、容易に解決することができる。米国にとっての大きな落とし穴は、IC基板である」と述べる。

拡大をするアジア勢の能力

 一方、世界最大の組み立て/テストメーカーであるASEは、現在アジアでの取り組みを強化しているところだ。同社は2021年12月、自社の製造資産を、中国半導体業界の構築をサポートしたプライベートエクイティファンドBeijing Wise Road Asset Managementに売却した。Wise Roadは2016年に、Beijing Jianguang Asset Managementとの協業により、NXP Semiconductorsのスタンダードプロダクト事業部門を28億米ドルで買収した。これにより誕生した新企業がNexperiaである。Wise Roadは、韓国のMagnachip Semiconductorsを14億米ドルで買収する計画を立てていたが、2021年12月に米国政府によって阻止されている。

 ASEは声明の中で、「ASEはWise Roadとの取引により、中国における戦略やリソース分配を最適化することで、全体的な競争力を高めるだけでなく最新技術開発への投資を強化し、台湾内で最先端の生産能力を拡大する」と述べている。

 ASEのCFO(最高財務責任者)であるJoseph Tung氏は、2022年2月に行われたアナリスト向けミーティングにおいて、「この取引の目的は、当社のリソースを再調整し、メガサイト『SPIL Suzhou』への投資に注力することにより、引き続き中国国内のチャンスに対応することだ。SPIL Suzhouは2022年中に、主に中国の顧客基盤拡大によって売上高が増加し、大きな成長を遂げていくだろう」と述べている。

 ASEのCOO(最高執行責任者)を務めるTien Wu氏は、同ミーティングにおいて、「中国が現在、独自にセキュアなサプライチェーンを構築していることを受け、中国の組み立て/テストメーカーは、生産能力を拡大させているところだ」と述べた。

 「中国の競合メーカーは、中短期的な目標として、中国に自給自足のエコシステムを構築することを掲げているため、産業市場や政府による支援の下でその生産能力を構築していくのは、ごく当然のことだといえる」(Wu氏)

 OSATメーカーは、TSMCやIntelなどの半導体メーカーよりも労働集約度が高い。現在、技術向上のための取り組みを進めているところだ。

 ASEは2021年に、組み立てラインの労働者が不要な完全自動工場を、25カ所に建設した。また2022年には、37カ所にまで増やす予定だという。Wu氏は、「さらに、顧客側の生産量をベースとして、年間10カ所の完全自動工場を増設するなど、徐々に勢いを加速させていきたい考えだ」と述べる

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