新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンについて、必要回数のワクチン接種が完了した割合が70%を超えた日本。今回は、テーマをこれまでとは180度転換し、「コロナのワクチン接種を拒否することが、理論的か否か」について語ってみたいと思います。ワクチン接種を拒否する人も、肯定する人も、お互いの立場に立って、ワクチン接種について考えてみたいのです。今回もおなじみ、“轢断のシバタ先生”が、超大作の「シバタレポート」を執筆してくださいました。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンについて、必要回数のワクチン接種が完了した割合が70%を超えた日本。今回は、テーマをこれまでとは180度転換し、「コロナのワクチン接種を拒否することが、理論的か否か」について語ってみたいと思います。ワクチン接種を拒否する人も、肯定する人も、お互いの立場に立って、ワクチン接種について考えてみたいのです。今回もおなじみ、“轢断のシバタ先生”が、超大作の「シバタレポート」を執筆してくださいました。⇒「世界を『数字』で回してみよう」連載バックナンバー一覧
【編集部より】今回も超大作です。お時間がない方は、まずは「シバタレポート」の7つの質問(上記目次で「Q」から始まる章)と、「減らせ、スプレッダー! なろう、ターミネーター!」だけでもお読みいただければ幸いです。
最近、「異世界召喚」だの、「異世界転生」をベースとしたコンテンツ(マンガ、アニメ、ライトノベル(ラノベ))が多いです。いや『ものすごく多い』というべきでしょう。
「異世界転生」のコンテンツを読んでいると、主人公の転生先は、大体この3つです。
であり、つまり、「現世界で、自分が持っている体験だけを使って、ラクして生きられる世界」です。
自分の記憶を維持したまま、ティーンエージャーの頃に戻る「タイムリープ」の話も、その一つに入ると思います。
―― 大人になった今の知識とロジックを持ったまま小学生に戻って、あの大人(教師)をやりこめてやりたい
というのは、大人であれば誰もが持っている願望です。
「苦労をしない」「努力をしない」「嫌な目に合わない」、そんな異世界で生きたい ―― 「異世界転生」のコンテンツは、私たちのつらい毎日からの逃亡願望を満たしてくれる、優れたコンテンツです。ただ、私は、「異世界転生」のコンテンツの価値は、それだけではないと思っています。
例えば、最近の異世界転生の物語では、主人公が王国の国王に転生するものがあります。
普通の高校生が、ある異世界の国王に転生して、内政、外交、財政、福利厚生、人口政策、就労、資源、そして政治理念やリーダーシップに至るまで、その膨大な問題を、四苦八苦しながら解決していくストーリーは、『よくできている』の一言です。
しかも、それらの内容を、分かりやすく、読みやすく、ラブコメやら魔法やらツンデレやらも突っ込んで、決してご都合主義に陥いらないようなストーリー構成には、ただただ感心するばかりです。
というわけで、一つ提案なのですが、どなたか、『生まれ変わったら金正恩だった件』というラノベ、マンガの創作やってみませんか?
国際政治に1mmも興味のないティーンエージャーが、交通事故で死んでしまい、
<北>の国家元首として転生してしまい、
とにかく「殺されない為」だけに奮闘する日々の物語
不本意ながら、
国内の政敵や身内を粛清し、
国連決議を無視して核ミサイルの開発と実験を繰返し、
国際問題を起こし続けて近隣国から敵意を向けられつつ
超大国にケンカを売り続けることで、
日々を必死で生き延びる ――
そんな、不幸な転生をしてしまった、日本の若者の物語
実際のところ、多くの日本人が、『あの国の元首(または政府)は、一体、何考えて生きているんだろう?』と不思議に思っていると思います。
これについては、コンビニで売っている980円くらいの「地政学*)の本」でも、ざっくりは理解できます。
*)全ての国家の振る舞いは、自国と周辺国との『物理的位置(緯度、軽度)の関係だけ』で決定するという考え方に基づく学問
しかし、ここに、さらに、国家元首の心象風景を描く、『生まれ変わったら』のマンガやアニメになれば、もう一段、深い理解ができると思うのです*)。
*)『生まれ変わったらトランプ(大統領)だった件』とか、『生まれ変わったら安倍首相だった件』も読みたいです。
先月、私は、シバタ先生(轢断のシバタ医師)に、お願いのメールを差し上げました。
シバタ先生
ごぶさたしております。英語に愛されないエンジニアの江端でございます。
最近、新型コロナワクチンに関するデマについて、色々目にするようになりまして、シバタ先生の予想がかなり的確に進行している、という感じはします(流石に、まだマスコミは動いていないようですが(子宮頸がんワクチンの二の舞を警戒している?))。
これは、基本的な免疫機能やDNAやRNAに関する無理解に因るものかとも考えておりましたが、どうも「ワクチン拒否の心理」は、知識やロジックの向こう側にある何かではないか、と思うようになってきております。
そこで、今回、私からお願いしたいことは、
(1)医学的検知から、新型コロナワクチン接種を拒否するに足る説得力のあるご説明
(2)上記(1)の説明が困難であれば、かなり無茶な仮説を持ち込んでも結構ですので、そのような理論の構築
です。
つまり、「新型コロナワクチン接種を拒否する人たちを勇気付けるような説明」です ―― ご不本意(不愉快?)かもしれませんが、ここで重要なのは、ワクチン否定の論理または仮説をすべてナンセンスといって棄却するのではなく、微々たる可能性であったら『可能性がある』と、ご判断して頂くことです。
このコラムの目的は、「新型コロナワクチン接種を拒否する人」も「新型コロナワクチン接種を肯定する人」も、お互いの立場を入れ替えて考えてみよう、という新しいパラダイムを示すことにあります。
正直なところ、「新型コロナワクチン接種で陰謀論を主張している人」は、私(江端)にとっては北朝鮮の元首と同じくらい意味不明です。しかし、そこを乗り越えて考えなければならない ―― 単なる違った意見を受けいれるだけの『寛容』程度では不十分であり、「拒否」も「肯定」も両方とも等しく論じら得るくらいの知見を得たのち、自己の見解を主張をすべきである、と言う、全世界への提言(というか"挑発")です。
本件、難しいお願いをしていることは、重々に承知しておりますが、何卒ご検討頂けますよう、お願い申し上げます。
江端智一
とお願いしたところ、お約束の日より早くレポートを頂きました ―― 今回も、ワード原稿14枚、合計、1万4000文字の大作でした。
そこには、私のようなITエンジニアでは絶対に見えてこない、「新型コロナワクチン接種を拒否する人」の立場に立った ―― 数字とロジックできちんと整理されていながら ―― 思いやりと優しさに溢れるコンテンツがありました。
本コラムも、これまでの一連の「コロナシリーズ」と同様に、シバタ先生と私(江端)の共著になります。
問題は、シバタ先生も、私(江端)も、新型コロナウイルスの構造や発病、感染の経緯と、ワクチンの構造や機能、安全性と危険性を定量的に理解している、ということで ―― ワクチン接種を疑問もなく当然と思ってきた ―― ということです。
さらに、私個人で言えば、日本国政府による陰謀が"ない"とは思いませんが(というか普通に"ある"と思うが)、このCOVID-19に関する事項に限っては、『陰謀』を企てる"理由がない"し、理由があったとしても"コストが見合わない"と思っています(筆者ブログ)。
そのような、私たち2人にとって、「新型コロナワクチン接種を拒否するに足るロジック作り」というのは相当にしんどい作業」でした。今回は、この「しんどい作業」のプロセスも含めて、全て説明したいと思います。最後までお付き合い頂けましたら幸いです。
冒頭の最後に、このシリーズの定番のお約束を確認させて頂きたいと思います。
本コラムを読んで頂く方は、「記載された内容を、無条件に信じない」「理想論を語るだけでなく、現実をきちんと受け入れる」そして「批判に終始するのではなく、解決方法を自分で考えられる」という人を対象としております。あらかじめご了承ください。
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