シャープの2021年度売上高は2兆4955億円(前年比2.9%増)、営業利益847億円(同16億円増)、当期利益857億円(同325億円増)であった。
スマートライフ部門は、特殊要因で前期大きく伸長したプラズマクラスターが減収となり、半導体不足の影響もあって減収減益になった。8Kエコシステム部門は、TV、MFP(多機能プリンタ)の好調な需要に加えて、シャープNECディスプレイソリューションズを連結したこともあり、増収増益となった。ICT部門は、GIGAスクール特需で前期好調だったPCの反動減、半導体不足などの影響で減収減益になった。ディスプレイデバイス部門は、PC・タブレット、車載向け需要が好調で増収増益となった。エレクトロニックデバイス部門は、新型コロナウィルスの影響で生産が減少し、減収減益になった。
2022年度の見通しは、中国でのロックダウンやウクライナ情勢の影響も含め、事業計画を現在調整中として会社計画の発表を見送った。いずれにしても同社にとって、ディスプレイデバイス部門の収益をどのように安定させるかが最大のポイントであろう。
ソニーの2021年度売上高は9兆9215億円(前年比10.3%増)、営業利益1兆2023億円(同2470億円増)、当期利益8822億円(同1474億円減)、売り上げ、営業利益ともに過去最高を記録したが、当期利益は繰延税金資産評価減2568億円の戻し入れがあった前期を下回った。
ゲーム&ネットワークサービス分野は、PS5などハードの増収や収益改善で増収増益だったが、ソフトの売上は伸び悩んだ。音楽分野は、ストリーミングサービスの増加で増収増益となった。映画分野は、スパイダーマンシリーズのヒットなどで大幅な増収増益を達成した。エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野は、TV、デジタルカメラの需要が好調で増収増益となった。イメージング&センシング・ソリューション分野は、モバイル機器向け需要の減少をデジタルカメラ、産業機器向け需要の増加が補い、若干の増収増益になった。金融分野は、ソニー生命子会社の損失計上などを含め、減収減益となった。
2022年度の見通しは、売上高11兆4000億円(同15%増)、営業利益1兆1600億円(同423億円減)、当期利益8300億円(同522億円減)を見込んでいる。コロナによる影響やウクライナ情勢など、事業環境のネガティブ要因を織り込んだ会社計画に見えるが、大手電機メーカーの中では円安メリットを最も享受しやすい企業であることを考えると、やや保守的な数字に見える。いずれにしても1兆円を超える営業利益を叩き出す同社の業績はポジティブに評価できよう。
今回の決算では、売り上げが前期比横ばいのNEC、微減の富士通を除いて、各社が増収を達成している。特に営業利益で1兆円超を達成したソニー、同7000億円超の日立製作所の2社は、高いレベルで収益性を安定させている点をポジティブに評価できよう。一方でDXや5G関連の追い風をなかなか生かしきれないNEC、富士通に対しては、思い切った施策が必要ではないか、という印象がどうしても残る。特にNECは収益の柱が育っておらず、2025年の同3000億円という決して高くない目標でさえ、本当に達成できるのかどうかが懸念される。
慶應義塾大学大学院にて管理工学を専攻し、工学修士号を取得。1985年に東京エレクトロン入社。セールスエンジニアを歴任し、1992年にデータクエスト(現ガートナー)に入社、半導体産業分析部でシニア・インダストリ・アナリストを歴任。
1996年にBZW証券(現バークレイズ証券)に入社、証券アナリストとして日立製作所、東芝、三菱電機、NEC、富士通、ニコン、アドバンテスト、東京エレクトロン、ソニー、パナソニック、シャープ、三洋電機などの調査・分析を担当。1997年にABNアムロ証券に入社、2001年にはリーマンブラザーズ証券に入社、やはり証券アナリストとして上述企業の調査・分析を継続。1999年、2000年には産業エレクトロニクス部門の日経アナリストランキング4位にランクされた。2004年に富士通に入社、電子デバイス部門・経営戦略室・主席部長として、半導体部門の分社化などに関与した。
2010年にアイサプライ(現Omdia)に入社、半導体および二次電池の調査・分析を担当した。
2017年に調査およびコンサルティングを主務とするグロスバーグ合同会社を設立、現在に至る。
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