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» 2022年05月31日 11時30分 公開

自作の「金融商品自動売買ツール」をGo言語で作ってみる「お金に愛されないエンジニア」のための新行動論(3)(5/9 ページ)

[江端智一,EE Times Japan]

楽しくなければ「趣味の世界」に持ち込むしかない!

 さて、今回の冒頭に、私は、

江端:「つまり、『好きなこと』とは、自分の中で自然に発生するものではなく、組織や、環境(境遇)や、時代や、トレンドなどのような「自分以外のものによって作られる」という、事実だよ」

と記載しました。そして、私は、この方法を逆手にとって、「お金に愛されないエンジニア」というコラムの連載を担当することで、投資を自分の「好きなこと」に変えていこうという、姑息(こそく)な戦略を実施しているわけです。実際、この連載がなければ、NISA口座以前に、証券口座を作る段階で、挫折していたと思います。

 ただ、現在のところ、正直、あまり「楽しい」とは感じられません。お金は生きるためのリソースなのですから、好き嫌いを言っている場合ではないのですが、私にとっての、プログラミングやシステム構築、特許明細書の作成と、同じ程度の熱意に至っているとは、到底言えません。

 自分の周りの環境が「自分の好きなこと」を作り出すことには、疑いはないと思います。しかし、「自分の好きなこと」を作り出すために、力ずくで環境を構築する、という逆向きのアプローチが正しく機能するのか?と問われれば、こちらには疑問が残ります。

 それと、今回の連載に関しては、今迄に経験のないほど、読者の皆さんからのコメント(メール)を頂けています ―― AIシリーズ、量子コンピュータシリーズでは、メールアドレスを作ってまでご意見を募集していたのに、応募数”0”が続いたのですが ―― 今回のコラムでは、読者の方が、私のプライベートアドレスを探し出して、私に(投資方法についての)ご意見を送って下さる、という ――奇妙なことが起きています。

 これは、多分、『あの江端に教えたい』という気持ちの表れだろう、と推測しています。

 では『あの江端』とは、どの江端なのか ―― それは、「うろたえている江端」「知識不足の江端」「初心者の江端」「これまでマウントを取り続けてきた(不愉快な)江端」です。

 私は、未知の分野のお話が聞けて助かっていますのでWin-Winであることは間違いありません。ただ、「楽しい」の方向は、こちらのコラム「若きエンジニアへのエール〜入社後5年間を生き残る、戦略としての「誠実」〜」の話に近いかもしれません。

 しかし、私の方は、と言えば、やっぱり、いまだ良い感じで”着火”している感じがしません。その理由は2つほどあるように思います。

 まず、原則として、金融商品の売買は、アクションが2つ(買う/売る)であり、そして評価関数は1つだけ『最大利益の追求』です。

 もちろん、言うまでもなく、金融というのは、人類が作り出した利用数最大のシステムであり、複雑系の極にあるシステムであり、最先端分野の投入先であり、そして、政治権力とも密接につながった、人類システムそのものといえます。

 この分野に、どれだけのエンジニアや研究員が投入されているか分からないくらいですが、それ故に、『私の入る余地がない』という感覚があります。

 加えて、金融システムは「可観測ではあるが、可制御ではない」 ―― 国家の権力者レベルであれば、金融システムのパラメタ(例:公定歩合とか、金融緩和とか)に”ちょっかい”を出せますけど、それでも金融の完全なコントロールなどはできません ―― というのも、ちょっと引っ掛かっています。

 良い例ではありませんが、「台風を観測できても、台風を制御することはできない」という感じであり、これまで私が扱ってきたシステムとは、性質が違うのです。これが1点目です。

 加えて、前述した通り、私は、お金の取り扱いになれておりません ―― 数万円の投資にビビり、数千円の損失で凹む程度のメンタルです。私にとってギャンブルなんて論外ですが、投資というのは、ある種のギャンブルでして―― つまるところ、投資と私(江端)は非常に相性が悪い。これが2点目です。

 ですが、もう、この連載始まっていますし、いまさら「ごめんなさい」と言って、逃げることもできません*)

*)担当のMさんが許さないでしょう。

 となれば、力ずくで「楽しい」に引き込むしかないですよね ―― ここは大きく出ましょう。私の目指すところは、金融商品自動売買ツールです。

 自分のお金をかけるのが怖いのであれば、過去または他人の(仮想の)お金でシミュレーションすればいいし、シミュレータを作るのは得意です。まず、これを第1段階とします。

 で、次に、そのシミュレーションのアルゴリズムを、金融商品自動売買ツールに載せて、コンピュータに自動取引をさせるのです。これが第2段階です。

 まあ自分で作ったアルゴリズムは、自分の考え方が乗っかるものではありますが、コンピュータは、外部ノイズを気にせずに、勝手に動き続けるので、私よりもマシな判断をしそうです。損をしても、諦めはつきやすいようにも思えます。

 そもそも、カッコいいじゃないですか。「自宅のPCが勝手に売買やっているんだよ」などと言えたら、ちょっと半端でないカッコよさですよ ―― それに比べれば、ベンツとか、ロレックスとか、その程度の高額商品などは、私にとっては、ただのデバイスとしか見えません。

 ただし、私、そういう金融商品自動売買ツールで、資産の大半を失った(「溶かした」というらしいです)人の話も、数多く聞いております。私も高い確率で、同じ目に遭うと思います。それでも、そのような損失は、ツールを自作して試す楽しさと、バーターとなる程度には、楽しいものになると思えるのです。

 私のリタイア後の目的は、「人間嫌い」で、「組織嫌い」で、「ルール嫌い」である、この私の厄介な性格を無修正のままで維持し、「ぼっち」を貫きながら、「安心安全な老後」を担保しつつ、「自分なりの楽しい」を継続して、「ゼロ苦痛」で死んでいくことです(と、連載1回目と2回目に書いたと思う)。

 これらの条件に乗るものの一つは、やはり「プログラミング」だろうな、と思うのです。加えて、幸いなことに、多くの日本人から嫌われ続けている「数学」も、苦手ではありません。つまり、私の「お金に愛されないエンジニア」の戦略は、同時に「老後のライフワーク」としても乗っかりそうなのです。

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