――半導体エンジニアの確保についてはいかがでしょうか。
清水氏 人材に関して一つうれしく感じたのは、TSMCが受託製造子会社Japan Advanced Semiconductor Manufacturing(以下、JASM)を日本に設立したことをきっかけに、半導体産業への取り組みが産官学で活発になったことだ。これまでは、「日本の半導体産業はもう伸びないのではないか」という雰囲気が日本の大学側にあり、それに伴って半導体関連の人材育成の動きが鈍くなり、人材が限られてしまうという現状があった。これは、われわれ企業側の努力も足りていないということでもある。そこで、5年ほど前から大学の研究室との関係構築強化に取り組み、半導体やイメージセンサー市場が今後も成長していくということを伝えてきた。
ただ、こうした活動は、たかが知れていた。今回、JASMの創設により、国や自治体も含めて半導体業界の人材育成に対する機運が高まり、これまでの取り組みとは圧倒的な違いが出ている。
こうした背景も踏まえ、われわれはイメージセンサー技術の将来性をアピールしていく。加えて、厚木テクノロジーセンターや九州各所のテクノロジーセンターで積極的な人材確保に取り組む他、欧州など世界に研究所を設立し、現地で人材を確保することも視野に入れていく。
――ソニーセミコンダクタソリューションズは、JASMに少数株主として出資するが、JASMとはどのように関わっていくことになるのでしょうか。
清水氏 エンジニアリソースも出し、さまざまな取り組みでしっかりと組んで協業していく。TSMCのCEOであるC.C. Wei氏とも、協力体制を維持、強化していく方向で話しており、「ロジック半導体の調達ももっとよろしく」などとジョーク交じりに話すこともあるくらいで、良好な関係を構築できていると感じている。
当社が使用するロジック半導体については、55nm、40nm、22nmプロセスを使用していくロードマップを立てている。トランジスタ搭載量の増加や消費電力の低減などのニーズも強いことから、どこかのタイミングで12nmプロセスを適用する計画もある。そのタイミングと、JASMが12nmで量産を開始するタイミングが合うかどうかは、今後調整が必要になるところだ。もちろん、われわれのイメージセンサーで12nm適用のロジック半導体が必要になったタイミングで、もし工場が近いJASMが12nmプロセスの量産を始めているなら、それは心強いことだ。
――イメージセンサー市場が2030年に向けて成長していく中、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング長崎テクノロジーセンター(長崎テック)の「Fab 5」がフル稼働になるのはいつごろと想定していますか。
清水氏 工場がフル稼働になる時期については、世の中の需要に依存するものでもあるが、今後3〜5年の間という可能性もある。イメージセンサー市場はそれ以降も拡張していくと予測されるので、どこかのタイミングでもう一つ(工場などを)作るのか、という話につながる。そのための準備はしていく必要がある。
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