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米国のCHIPS法、上院通過で承認間近に審議停滞の末

米国のCHIPS法(Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors for America Act)が承認に一歩近づいた。上院は、米国の半導体産業の再建に焦点を当てた補助金措置のパッケージに賛成票を投じた。

» 2022年07月25日 10時30分 公開
[Alan PattersonEE Times]

 米国のCHIPS法(Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors for America Act)が承認に一歩近づいた。上院は、米国の半導体産業の再建に焦点を当てた補助金措置のパッケージに賛成票を投じた。

 2022年7月19日(米国時間)、上院は、中国との半導体競争を強化するために520億米ドル以上を投じる法案に対し、64対34の賛成多数で、超党派の支持を表明した。

 上院の多数党院内総務を務めるChuck Schumer氏は声明の中で、「これにより、多くの努力と双方の妥協の末、この法案が最終可決に向けて進んでいることが明確になった。同法案によって、米国を再び主要な半導体生産国にすることで、サプライチェーンへの圧力の緩和と国家安全保障の強化を実現し、今後数年にわたり米国の経済活動に新たな波を生み出すことができる」と述べている。

 上院は、近く最終法案の可決に向けて投票を行うとみられる。ただし、法案の成立には、下院を通過して、ジョー・バイデン大統領の署名を得る必要がある。

 バイデン政権と米商務省(DOC)は、欧州連合(EU)や他の地域の政府がより魅力的な刺激策を提示することで、Intelが200億米ドルを投じる予定の米国オハイオ州の新工場建設プロジェクトなど、米国内での投資が遅れることを懸念し、同法案をできる限り迅速に承認する必要があると強く訴えている。

Intelが米国オハイオ州に建設予定の工場イメージ 出所:Intel

 Intelは2022年6月23日(米国時間)、CNBCに対して、「残念ながら、CHIPS法の資金調達は当社が期待していたよりも動きが遅い。オハイオ州のプロジェクトを当社が長年思い描いてきたスピードと規模で進められるように、議会が行動すべき時だと考えている」と述べている。

 DOCによると、最先端の半導体を含む世界の半導体の約70%はアジアで生産されており、米国での生産はわずか12%だという。半導体不足によって、2021年の自動車生産台数は770万台減少した。また、Deloitte Tohmatsu Consultingによると、2021年は自動車業界が2100億米ドルの損失を出したことを含め、企業が被った損失額は世界的に見ると5000億米ドル以上に上るという。

 上院の原案の執筆者である上院議員のJohn Cornyn氏は2021年、補助金パッケージが承認を得られなかった場合の影響についてTwitterで警告している。

 「米国が(米国で製造されていない)先進の半導体へのアクセスを失った場合、その年のGDPは3.2%縮小し、240万人の雇用が失われる可能性がある。このGDPの損失は、進行中の半導体不足により2021年に失われると推定される米国のGDP、2400億米ドルの3倍(718億米ドル)にも上る」(Cornyn氏のTwitterより)

さらに修正案提出の可能性も?

 1年前の2021年6月、上院は計2500億米ドル包括的な法案「U.S. Innovation and Competition Act」を可決した。その後、下院が気候変動対策資金を含む独自の法案を作成し、共和党の反対で取り組みが停滞していた。

 米国の法制化の際にはよくあることだが、CHIPS法が成立するまでの数日間で、さらに多くの修正案が提出される可能性がある。

 Reuters(ロイター通信)の報道によると、米国の半導体企業の中には、このままのCHIPS法ではIntelなどのメーカーにしか支援が行き届かないとして反対しているところもあるという。AMD、NVIDIA、QualcommなどIntelと競合するファブレス半導体メーカーは、半導体を製造していないため補助金の対象にはならないという見方だ。

 報道では、「米国の半導体メーカーであるIntel、Texas Instruments、Micron Technologyは、CHIPS法と、FABS法(Facilitating American-Built Semiconductors Act)で提案されている製造装置購入のための投資税額控除の両方の恩恵を受ける」としている。

 また、ロイター通信は、「IntelはCHIPS法で200億米ドル、FABS法で50億米ドルあるいは100億米ドルを手にする可能性がある。300億米ドルが直接の競争相手に渡り、自分は1セントももらえない? そうした状況になれば市場に問題を引き起こすだろう」と語る業界関係者の話も紹介している。

 米国の半導体業界を代表するロビー団体は、半導体メーカーやファブレス企業を支援する、より広範な対策を主張した。

 半導体工業会(SIA:Semiconductor Industry Association)は声明で、「FABS法は、半導体のエコシステム全体を強化するために、製造と設計の両方に対する支出を含むべきだ」と述べている。

 また、CHIPS法が支援を必要としない黒字の半導体メーカーを補助する一方で、生き残りに苦労している米国の電子機器エコシステムの他の部分への支援を否定することになると主張する者もいる。

【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

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