さて、Webで、「初心者、投資、入門」あたりでググってみると、大抵、(A)のテクニカル分析か、(B)のファンダメンタルズ分析が出てきます。これ、多分、証券会社側の事情もあると思います(後述します)が、まずは、この2大投資手法について、解説してみたいと思います。
というイメージです。
私には、コンピュータ解析における、「リアルタイムの画像分析(テクニカル分析)」と「データベースを使った統計分析(ファンダメンタルズ分析)」の違いにも見えます。
ところが、(D)のランダムウォーク分析のシンパ(というか、『ウォール街のランダム・ウォーカー』の著者、バートン・マルキールさんによれば)、(A)のテクニカル分析も、(B)のファンダメンタルズ分析も、両方、うまく働いていない、とのことです*)。
*)まあ、本のタイトルからして、他の分析方法にケチをつけるのは当然とは思いますが、この本、初版から45年を経過して、既に12版の重版を重ねている超有名書です。
この本の第5章4項の「チャート分析(テクニカル分析と同義)はなぜ上手くいかないか」、第8項の「なぜファンダメンタルズ分析も必ずしも上手くいかないのか」を、私なりにまとめた内容を以下に示します。
テクニカル分析については、「株価の変動を発見してから動いても、遅くないか?」ということ、ファンダメンタルズ分析については、「市場(マーケット)って、そもそも正解を出すものなのか?」のフレーズが、胸を貫きました ―― まったく同感です(これも後述します)。
我田引水ですが、私、データ分析については、相当な場数を踏んできて、ひどい目に遭ってきました。特にひどかったのは、以下の2つです。
私は、データの動きに意味があるように見えても、その大半が人間の誤解や思い込みであることを知っていますし、データ分析の結果が、わずかな数値の違いでひっくり返ることなど、日常茶飯事でしたので、上記のバートン・マルキールさんの指摘が、心に染み込むように理解できるのです。
もっとも、(A)(B)の分析手法は、それなりに実績もあり、これまで生き残ってきたものですし、なにより、証券会社のコア技術です ―― 顧客に金融商品を売りつけて、手数料をもらう時には、その理由を述べなければなりませんが、この2つの手法は、金融商品を売りつける理由を作成する「ストーリーメーカー」としては、極めて優秀なのです。
ちなみに、証券会社は、売り付けた商品で顧客が大損害を出しても、補償はもちろん、謝罪も一切しません。『われわれは、アドバイスをしただけです』と言い放ちます(まあ、当たり前ですが)。
次に(C)アノマリー分析の説明をします。アノマリーとは、市場における経験則のことです。
このアノマリーを「どう使うか」が、戦略になります。というのは、もし市場関係者が、アノマリーを信じて同じ投資行動を行ったら、当然利益を上げることはできません。とすれば、このアノマリーに対して逆の行動を取ることで、勝機が出てくるはずです ―― が、その程度のこと、投資家は当然分かっているはずです。
例えば、「魔の水曜日」に株価が下がりやすいのであれば、当然、その水曜日の株は「買い」になるはずで、買いの集まった株価は、上昇してしまいます。これだけで「魔の水曜日」のアノマリーは崩壊です。
もしかしたら、意外に投資家の多くが「アノマリー信者」が多くて、アノマリーに従うような行動を「良し」とするように振る舞っている可能性もあります。人間は、意外に信仰には弱いものです。
で、まあ、ちょっと調べてみたのですが、結果としては「アノマリーは参考程度に留めておけ」というアドバイスの記事が多かったようです。
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