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主要半導体メーカーの決算コメントから今後を見通す大山聡の業界スコープ(56)(3/3 ページ)

» 2022年08月17日 11時30分 公開
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半導体業界のけん引役と期待されるTSMC

 2022年7月14日に発表されたTSMCの4〜6月期決算によれば、売上高は同44%増の5341億台湾ドル、営業利益は同80%増の2621億台湾ドル、当期利益は同76%増の2372億台湾ドル、という実績であった。5nmプロセスが売上高の21%、7nmプロセスが同30%と、最先端プロセスが売上高の半分を叩き出しており、この分野で他社を寄せ付けない実績が高い成長率を実現している。アプリケーション別では、HPC(High Performance Computing)向けが43%、スマホ向けが38%、この2つで全体の8割以上を占めていることになる。7〜9月期の売上高見通しは198億〜206億米ドル(4〜6月期は181億米ドルだった)。前四半期比で10%以上の成長を見込んでいるが、5nm/7nmプロセスといった最先端プロセスへの需要はTSMCの生産能力を大きく上回っており、こちらの能力増強次第と考えられる。ただしTSMCは今回の決算発表時に、2022年度の設備投資計画を従来の440億米ドルから400億米ドルへと下方修正した。スマホやPC向けの需要が下振れていること、サプライチェーンの中では在庫調整を進める動きが出ており、これが2023年前半まで継続しそうなことを理由に挙げている。

考察

 PCやサーバ向けでIntelのシェアを奪いつつあるAMD、スマホ向けで5G対応に絶対的な優位性を維持しているQualcomm、この両社でさえ、7〜9月期は4〜6月期を若干上回るか横ばい、という慎重な見通しを立てている。Intelに至っては前年比で2ケタのマイナス成長を覚悟しているし、Samsungもメモリ市場の見方はかなり慎重な姿勢で、いかにして単価を維持するか、という点に注意を払っている。

 また、TSMCの設備投資の下方修正も重要なポイントだろう。メモリだけでなく、半導体市況全体が調整局面に入っていることを示している。TSMCは今後、これまでのIntelに代わって半導体業界を代表する立場になりうる重要企業になる。TSMCのコメントにはより一層、耳を傾ける必要があると筆者は考えている。

筆者プロフィール

大山 聡(おおやま さとる)グロスバーグ合同会社 代表

 慶應義塾大学大学院にて管理工学を専攻し、工学修士号を取得。1985年に東京エレクトロン入社。セールスエンジニアを歴任し、1992年にデータクエスト(現ガートナー)に入社、半導体産業分析部でシニア・インダストリ・アナリストを歴任。

 1996年にBZW証券(現バークレイズ証券)に入社、証券アナリストとして日立製作所、東芝、三菱電機、NEC、富士通、ニコン、アドバンテスト、東京エレクトロン、ソニー、パナソニック、シャープ、三洋電機などの調査・分析を担当。1997年にABNアムロ証券に入社、2001年にはリーマンブラザーズ証券に入社、やはり証券アナリストとして上述企業の調査・分析を継続。1999年、2000年には産業エレクトロニクス部門の日経アナリストランキング4位にランクされた。2004年に富士通に入社、電子デバイス部門・経営戦略室・主席部長として、半導体部門の分社化などに関与した。

 2010年にアイサプライ(現Omdia)に入社、半導体および二次電池の調査・分析を担当した。

 2017年に調査およびコンサルティングを主務とするグロスバーグ合同会社を設立、現在に至る。


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