今回は1993年〜1995年の主な出来事をご紹介する。
フラッシュメモリに関する世界最大のイベント「フラッシュメモリサミット(FMS:Flash Memory Summit)」の会場では最近、「Flash Memory Timeline」の名称でフラッシュメモリと不揮発性メモリの歴史年表を壁にパネルとして掲げていた。FMSの公式サイトからはPDF形式の年表をダウンロードできた(ダウンロードサイト)。この年表は1952年〜2020年までの、フラッシュメモリと不揮発性メモリに関する主な出来事を記述していた。
さらに、今年(2022年)のFMSが8月2日〜4日に開催されたことに併せ、期間を2022年まで延長した新しいバージョンの歴史年表を公式サイトからダウンロードできるようになった(ダウンロードサイト)。
そこで本シリーズでは今回から、新しいバージョンの年表を参考に、主な出来事の概略を説明していく。原文の年表は全て英文なので、これを和文に翻訳するとともに、参考となりそうな情報を追加した。また年表の全ての出来事を網羅しているわけではないので、ご了承されたい。なお文中の人物名は敬称略、所属や役職などは当時のものである。
前回は、1992年〜1993年の主な出来事を説明した。NORフラッシュメモリの市場がUV-EPROMの置き換えによって急速に立ち上がり、AMDと富士通がNORフラッシュ市場に参入した。またフラッシュメモリをシステムが管理する仕組みが開発され、ストレージ応用の環境が整ってきた。今回は1993年〜1995年の主な出来事をご紹介する。
NORフラッシュメモリは継続して大容量化が進んだ。インテルが32Mビット品を1993年に発表した。1990年に2Mビット品をインテルは発表しているので、3年で16倍に拡大したことになる。
フラッシュメモリのストレージ応用では、HDD互換ドライブやフラッシュ内蔵の小型カードなどで動きがあった。HDD互換ストレージでは、HDDベンダーのコナー(Conner)とインテルが共同でATAインタフェース互換のNORフラッシュ搭載ストレージ(フラッシュドライブ)を1993年に開発した。記憶容量は最大で10Mバイトとまだかなり小さい。なお、HDDでは1993年の時点で2.5インチと小型で記憶容量が520MバイトのHDD製品「MK2428FB/MK2428FC」を東芝がパソコン向けに量産出荷していた(参考資料「情報処理学会 コンピュータ博物館」)。
フラッシュメモリ搭載の小型カードではサンディスクが、1994年に「CompactFlash(コンパクトフラッシュ)」カード規格を発表した。1995年にはCompactFlashカードの規格策定団体「CFA(CompactFlash Association)」が設立される。「コンパクトフラッシュ」はコントローラーを内蔵しており、パラレルATAと電気的に互換のインタフェースを備える。このため、PCMCIAカードのソケットとは変換アダプターを介して簡単に接続できた。取り外しが容易な小型の補助記憶装置として適していた。
「CFカード」(CompactFlashはサンディスクの商標であったため)あるいは類似の名称で数多くのベンダーが1990年代後半に参入し、ノートパソコンやデジタルスチルカメラ、携帯型情報端末(PDA)、産業用マイコン組み込みボードなどに普及した。
このほか1994年には、携帯型録音機器、半導体パッケージ型ストレージなどのフラッシュ応用製品が登場した。詳しくは次回で述べたい。
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