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“同心円”を広げるApple、M2搭載MacBook Pro分解で読み解くチップの内製化この10年で起こったこと、次の10年で起こること(65)(4/4 ページ)

» 2022年08月24日 11時30分 公開
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Intel製Thunderboltチップが消えた

 表2は、M1とM2において、プロセッサ以外の主要チップを開封し、比較した結果である。シリコン上には、パッケージ名と異なるシリコンネームを確認することができる。不一致のものがほとんどである。プロセッサの性能を最適化するために必須の電源ICはAppleの自社製だ。M2では2個が組み合わされている。M1での電源ICは「TMLT46」と「TMLT47」の2個。M2では「TMND33」「TMND34」の刻印を確認できる。内部の回路構成も異なれば、チップサイズも異なるものとなっている。

表2 M1、M2における電源管理ICとThunderboltチップの比較[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 表2の右はThunderboltインタフェースのリタイマーチップのシリコン型名である。Intel製のThunderboltチップを2011年から使い続けてきたAppleだが、2022年のMacBook Proでは「TMNB25」というシリコン型名のチップに置き換わっている。型名からもAppleチップであることは明白だ! チップ写真などの詳細はテカナリエレポートでぜひ確認いただきたい。なぜIntel製から置き換わることになったかも、各所セミナーで解説を行っているところである。

Apple製品における、チップの内製化ヒストリー

 表3は、Apple製品における“内製化ヒストリー”を簡単にまとめたものである。表にはないがイヤフォンやスマートウォッチなどで採用されるWi-Fiチップ、Bluetooth Audioチップ、UWB(Ultra Wide Band)通信チップなどもAppleの自社製化が進んでいる。

表3 Apple製品における、チップの内製化ヒストリー[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 2010年に「iPhone 4」向けの「A4」プロセッサが内製化され、2020年にはMac向けのM1も内製化された。2022年にはThunderboltも内製化されている。自社でのチップセット化が確実に進んでいるわけだ。

 筆者は、チップセットを日本語で「同心円」と解釈している。プロセッサを取り囲む円を拡張することで、カバー範囲を広げていくことが重要であるからだ。プロセッサを皮切りに、電源IC、さらには高速インタフェースとAppleは確実に同心円(チップセット)を広げている。2022年秋には次世代の「iPhone 14」シリーズがリリースされる。引き続きApple製品をウォッチし報告していきたい(iPhone 14関連のセミナーが、既に複数回、10月以降に計画されている)。


執筆:株式会社テカナリエ

 “Technology” “analyze” “everything“を組み合わせた造語を会社名とする。あらゆるものを分解してシステム構造やトレンドなどを解説するテカナリエレポートを毎週2レポート発行する。会社メンバーは長年にわたる半導体の開発・設計を経験に持ち、マーケット活動なども豊富。チップの解説から設計コンサルタントまでを行う。

 百聞は一見にしかずをモットーに年間300製品を分解、データに基づいた市場理解を推し進めている。


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