理化学研究所(理研)らの国際共同研究グループは、ジョセフソン接合間にコヒーレント結合が存在することを示す「非局所ジョセフソン効果」を初めて観測した。ジョセフソン接合に関する新しい制御手法の提案は、超伝導量子コンピュータの開発に貢献するとみられる。
理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター量子機能システム研究グループの松尾貞茂基礎科学特別研究員と樽茶清悟グループディレクターらの国際共同研究グループは2022年9月、ジョセフソン接合間にコヒーレント結合が存在することを示す「非局所ジョセフソン効果」を初めて観測したと発表した。ジョセフソン接合に関する新しい制御手法の提案は、超伝導量子コンピュータの開発に貢献するとみられる。
国際共同研究グループは、カリフォルニア大学のクリストファー パームシュトローム教授らによるグループが作製した半導体ナノ細線(InAs)上に、超伝導体アルミニウム(Al)電極を用いて、2つのジョセフソン接合(接合Uと接合L)素子を作製し、それぞれに電気的制御を行うためのゲート電極を設けた。
接合Lは超伝導体のループに埋め込まれている。面直に磁場を加えると、接合Lの位相差を制御できるという。そこで、この素子を10mKという極低温にまで冷却し、接合Uの電子輸送特性を測定した。
この結果、ループ外の接合Uに対し電流をゼロから大きくしていくと、抵抗がゼロでなくなる電流値(スイッチング電流)は、磁場に対して振動することが分かった。スイッチング電流の振動周期は、超伝導ループが囲む面積と磁場の大きさで計算できる接合Lの位相差が変化する周期とほぼ一致した。
このことから、接合Uにおけるスイッチング電流の磁場に対する振動現象は、接合Uを流れる超伝導電流が接合Lの位相差に対し、依存性があることを示す結果だという。つまり、接合Uと接合Lがコヒーレントに結合することによって、非局所ジョセフソン効果が生み出されたとみている。
さらに、接合Uと接合Lのゲート電極に電圧を印加し、それぞれスイッチング電流の振動がどのように変化するかを調べた。この結果、接合Uを制御すると、スイッチング電流の振動振幅と、振動成分を取り除いたスイッチング電流の値がともに大きく変化した。接合Lを制御すると、スイッチング電流の振動振幅のみが大きく変化したが、振動成分を取り除いたスイッチング電流はほとんど変化しなかった。このことから、スイッチング電流の振動は、接合Uと接合Lのコヒーレント結合により生じた現象であることが分かった。
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