1982年に商品化されたコンパクトディスク(CD)には、オーディオ信号の記録時間が標準で74分、最大で80分という制約があった。80分を超えるような長時間記録には、磁気テープが適している。1983年には早くも民生用コンパクトカセットテープのデジタル規格を検討する「DAT(Digital Audio Tape) 懇談会」が発足し、1985年には技術仕様がまとまった。そして1987年には据え置き型のDAT録音再生デッキが商品化されている。
DATでもソニーは携帯型の再生専用機「WMD-DT1」を開発し、1993年2月〜3月に発売した。といってもDATの音楽テープはごく一部を除いて商品化されていないので、録再デッキで録音済みのテープ(DATカートリッジ)と組み合わせて使うことが前提となる。
DATカートリッジの大きさは幅73mm、奥行き54mm、厚み10.5mmである。テープの幅は3.8mm。なおコンパクトカセットのカートリッジは本体寸法が幅100mm、奥行き63mm、厚み12mm、テープ幅は3.81mmなので、DATカートリッジはコンパクトカセットと比べてひと回り小さくなったことが分かる。
このように見ていくと、携帯型オーディオの世界ではソニーが圧倒的な地位を築いていたことが分かる。しかしその地位は安泰ではなかったことを、われわれは既に知ってしまった。1990年代後半にMP3プレーヤーの商品化が韓国のベンチャー企業と米国のPC周辺機器メーカーから始まったことは、その象徴的な出来事に見える。詳しくは次回に述べたい。
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