TSMCは、スマートフォンやその他の家電メーカーからの需要の見通しの悪化を受け、2022年の生産能力拡張予算を同年7月に発表した当初の400億米ドルから360億米ドルに削減するという。
TSMCは、スマートフォンやその他の家電メーカーからの需要の見通しの悪化を受け、2022年の生産能力拡張予算を同年7月に発表した当初の400億米ドルから360億米ドルに削減するという。
Appleの「iPhone」およびその他のスマホ向け最先端半導体を製造する世界有数のファウンドリーである同社は、「最先端の7nmチップの需要の落ち込みが、同ノードの稼働率に影響している」と述べている。ただし同社は、収益性の重要な指標である稼働率に関する具体的な数値は発表していない。
TSMCのCEO(最高経営責任者)を務めるC.C.Wei氏は、2022年10月13日(台湾時間)に実施した業界アナリスト向けの第3四半期決算説明会で、「半導体の在庫調整が続いており2023年上半期の稼働率に影響が出る見通しだが、2023年下半期から、当社の差別化した最先端かつ高度な専門技術に対する堅調な需要によって事業が支えられると予想している」と述べた。
Wei氏は、「2023年は半導体業界全体が縮小する一方で、TSMCにとっては成長の年になる」と述べたが、詳細については明らかにしなかった。同氏は、「TSMCの7nmおよび6nmノードの稼働率は、2023年前半にかけて過去3年間より低下すると予想される」と付け加えた。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによって在宅勤務が進んだ結果、データセンターの拡張やモバイル機器の需要が増え、半導体業界は2020年から安定した成長が続いてきたが、今回の低迷によってマイナス成長に逆転するとみられる。半導体の不足は、自動車や防衛関連企業を含むシステムメーカーに広く影響を及ぼしている。
2022年のTSMCの設備投資削減うち、半分はASMLなどのサプライヤーの半導体製造装置の不足によるもので、皮肉なことにASMLは装置の製造に必要な半導体を購入することができなかったという。
TSMCは最新の5nmチップで世界をリードしてきたが、数カ月以内に最初の3nmチップを生産する予定だという。TSMCのライバルで、半導体ファウンドリー事業で2位につけるSamsung Electronicsは、2022年に3nmチップの生産を最初に発表した企業となった。TSMCによると、3nmチップの需要は2023年下半期までに同社売上高の1桁台前半のパーセンテージを占める見通しだという。
一部のアナリストは、7nmの稼働率低下に驚きを示している。
これに対し、Goldman Sachsのアナリストを務めるBruce Lu氏は電話会議で、「われわれは、TSMCが常により良い結果を出すという予想に慣れすぎているだけだ」と述べていた。
米国の投資会社であるSusquehanna International Groupでアナリストを務めるMehdi Hosseini氏は、「TSMCの顧客在庫は25年ぶりの高水準にあり、在庫の停滞は2023年前半まで続くと予想される」と述べている。
Wei氏は、「在庫調整によるTSMCへの主な影響は、2023年上半期に表れる見通しだ」と述べている。
電話会議に参加したアナリストの多くは、世界の半導体サプライチェーンに転換を迫る米中間の地政学的問題に関して質問した。
TSMCは、欧州へのファウンドリー建設の可能性について予備評価中であると述べた。米国が2022年10月7日(米国時間)、中国に対する半導体および関連製造装置の輸出制限強化を発表したことを受け、TSMCは中国江蘇省南京市の同社施設で16nmプロセスのチップを製造する許可を得たことを認めた。
米国と日本の新拠点での半導体生産コストは上昇するものの、同社は長期的に53%以上の粗利益率を維持するとしている。2022年第3四半期のTSMCの粗利益率は60%を超えた。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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