ルネサス エレクトロニクスの執行役員兼オートモーティブソリューション事業本部副本部長のVivek Bhan氏が、欧州最大規模のエレクトロニクス展示会「electronica 2022」(2022年11月15〜18日)において、同社のADAS(先進運転支援システム)およびEV(電動自動車)領域における戦略について語った。
ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)はドイツ・ミュンヘンで開催された欧州最大規模のエレクトロニクス展示会「electronica 2022」(2022年11月15〜18日)の会場で記者会見を実施し、同社の執行役員兼オートモーティブソリューション事業本部副本部長のVivek Bhan氏がADAS(先進運転支援システム)およびEV(電動自動車)領域における市場戦略について語った。
ルネサスはこれまで車載SoC(System on Chip)の「R-Car」や車載マイコン「RH850」、PMIC(Power Management IC)、タイミングIC、独自のビデオ信号アナログ伝送技術であるオートモーティブHDリンク(AHL)向けICといった幅広い製品群および、ソフトウェアの組み合わせによって、サラウンドビューやフロントカメラなどの各用途に向けたソリューションを展開してきた。Bhan氏は、「われわれの低消費電力かつ省スペースのソリューションは、世界中のティア1/自動車メーカーに採用され、既にカメラ分野で非常に強い存在感を示してきた」と説明している。
ここに、同社が2022年10月に買収したインドの新興企業Steradian Semiconductor(以下、Steradian)のレーダー製品群を追加したことで、既存の車載カメラシステムやその他センシングシステムとも組み合わせた、センサーフュージョンのポートフォリオが拡充されたとしている。Bhan氏は、「センサーフュージョンに関するADAS分野では、カメラからレーダーシステムへと成長を続けている。われわれは、これらのソリューションを幅広い製品で補完し、最適化された完全なシステムを提供することができる」と強調した。
ルネサスはelectronica 2022において、同社初となる車載レーダートランシーバーMMIC「RAA270205」を発表した。これはルネサスがSteradianと共同で開発した製品で、使用可能な周波数範囲は76G〜81GHzで、4チャンネルのトランスミッター(Tx)と、4チャンネルのレシーバー(Rx)を搭載。前方監視長距離レーダーや4Dイメージングレーダー、コーナーレーダー、集中型アーキテクチャのサテライトレーダーなどで使用が可能という。
RAA270205は、最大5GHzの周波数帯域で、112.5MSPS(メガサンプル/秒)と高いサンプリングレートのA-Dコンバーターも搭載。レシーバー回路の雑音指数(NF)は9dB。最大300MHz/μs(メガヘルツ/マイクロ秒)の高速チャープ変調によって、レーダー分解能および物体検出性能を向上させたという。消費電力は1.2Wと低く、「業界トップクラスの精度と低消費電力を両立した」としている。
Bhan氏は、「Steradianから獲得した技術により、ルネサスはレーダー空間におけるさまざまな種類の帯域幅と周波数に対応することができるようになった。当社のレーダー分野における今後の展開に強い期待を抱いている」と語っていた。
RAA270205は、2023年第1四半期のサンプル出荷を予定している。
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