同社は今回、中期財務目標や成長に向けた取り組みに関する詳細も語った。同社は、売上高成長率が年平均成長率10%台後半、営業利益率が10%前半から半ばとする目標を掲げているが、肥塚氏は、「現状この見通しのトラックを進んでいる。自主的な売り上げ増に加え、為替の影響や特需的な押し上げ効果もあり売上高は1900億円にまで達するが、2023年度以降はデザインウィンのうち量産時期を迎えるものを着実に出荷して行くことで、元のベースにあるラインをきちんと確保して行く」と説明した。
肥塚氏はさらに「“More Than Moore”の時代に入り、新しいサービスやアプリケーションが生まれてくると、カスタムSoCの需要はますます増える」と言及。これらの需要拡大に対応するため、事業拡大に対応した研究開発体制の構築や、研究開発および最先端技術への投資などを進め、自動運転/ADAS(先進運転支援システム)や5G(第5世代移動通信)/データセンター/HPC(High Performance Computing)およびスマートデバイス市場にリソースを集中し、中期以降の成長を継続するとした。
研究開発および最先端技術への投資強化の内容については、肥塚氏は「主要なアプリケーション間では、サブシステム構成やバスアーキテクチャが似通ったものになってきている。当社はコンピュータアーキテクチャに基づくプラットフォーム型の設計手法に移行し、各機能層の既存の設計資産を維持しながら技術進化に対応して行くことを目指す」と説明。こうした、プラットフォーム型の設計手法によって研究開発の効率や収益性改善を図るという。
肥塚氏は、「われわれはプラットフォーム型の開発への移行を進め、SoC開発の初期段階でのソフトウェア開発環境の構築から顧客をサポートする。顧客視点で見た際のソリューションSoCのビジネスモデルの優位性がここにあると考えている」と説明。さらに、3nm以降のプロセスノードをベースにした設計や、チップレットへの投資も継続して進めていく方針だ。
研究開発体制の変革に関しては、注力事業分野とビジネスモデルの変化に合わせ、グローバルレベルでの開発体制の再構築に取り組んでおり、2022年度から開発体制を大きく見直した三層構造の組織体制を導入。事業の拡大に合わせた人的リソース開発体制の強化を進めていく。肥塚氏は、「当社では『第2の変革』と呼んでいるが、この変革を通じさらなる発展を目指す」と強調した。
また、製造委託先について、肥塚氏は、「最先端を手掛け、結果的にTSMCへの依存度が高くなっているが、顧客の要望に応えるような多様なファブ活用を心掛けたい」と説明。2nmプロセス以下の次世代半導体の製造基盤確立を目指し2022年8月に始動したRapidusについても、「われわれは7nm製品の量産を行い、5nmの自動車向けチップの設計を終えている。先端技術分野でグローバル市場での成長を目指し、このユニークなビジネスモデルで世界のイノベーションに貢献したいと思っている。将来の話と思うが、最先端の製造拠点が日本にできることは、その選択肢が広がるということになるので、期待している」と言及した。
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