立命館大学の研究チームと福田結晶技術研究所は、分子線エピタキシー法を用いてScAlMgO4(SAM)単結晶基板上にGaN単結晶薄膜を直接成長させることに成功した。
立命館大学理工学部電気電子工学科の荒木努教授や総合科学技術研究機構の藤井高志教授、立命館グローバル・イノベーション研究機構(R-GIRO)の出浦桃子准教授らによる研究チームと福田結晶技術研究所は2023年2月、分子線エピタキシー法を用いてScAlMgO4(SAM)単結晶基板上にGaN単結晶薄膜を直接成長させることに成功したと発表した。直径65mmのSAM基板上に成長させたGaNテンプレートを、評価用テストウエハーとして2023年春より供給する。
電子デバイスや光デバイス用の材料として、GaN(窒化ガリウム)やInGaN(窒化インジウムガリウム)といった窒化物半導体が用いられてきた。これらの窒化物半導体を結晶成長させるための基板として、SAM基板が注目されている。
SAM基板は、GaNと格子不整合が約1.8%と小さく、In組成が17%のInGaNと格子整合するためである。剥離も容易で、剥離後はSAM基板を再利用することができるという。有機金属気相成長法によるGaN成長で必要だったバッファ層なども不要となった。
研究チームは今回、福田結晶技術研究所が立命館大学に新規導入した、エピクエスト製の分子線エピタキシー装置を活用して、窒化物半導体の結晶成長技術を共同で開発した。結晶成長温度や原料供給比、成長初期過程といった成長パラメーターを最適化することで、SAM単結晶基板上にGaN単結晶薄膜を直接成長させることに成功した。
研究チームは、SAM基板上にGaNが原子レベルで急峻な界面を形成し成長していることを、断面透過電子顕微鏡で確認した。直径2インチおよび、65mmのSAM基板上にGaN薄膜を均一に成膜することが可能になったことから、これらを評価用テストウエハーとして供給し始める。
開発したGaNテンプレートを用いればハライド気相成長(HVPE)法により、膜厚1mmのGaNも作製することが可能だという。2インチのSAM基板上にInGaN薄膜を成長させたテンプレートの開発も進めている。
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