始めは「表面プラズモン共鳴(SPR:Surface Plasmon Resonance)」法を簡単に説明しよう。
プリズム付きガラス基板の表面(プリズムとは反対の面)に金(Au)の薄膜を蒸着し、Au表面にバイオ分子を装着する。ガラス基板の裏面に、プリズムを経由して単一波長の光を斜めに入射する。ここで重要なのは、金薄膜裏面における光の反射角と反射光強度の関係である。
光が入射すると、金薄膜表面の自由電子が集団となって振動(プラズマ振動)し、電界を発生させる。このとき特定の角度では、電子のプラズマ振動と入射光が共鳴(「表面プラズモン共鳴(SPR)」と呼ぶ)し、光が金薄膜に強く吸収される。従って反射光が著しく弱くなる。
バイオ分子(プローブ)が標的分子を捕捉すると、この表面プラズモン共鳴(SPR)が起こる角度が変化する。この現象を利用し、反射角の変化を光電変換素子アレイ(例えばフォトダイオードアレイ)などで電気信号に変換する。
次は「水晶振動子マイクロバランス(QCM:Quartz Crystal Microbalance)」法を説明しよう。水晶の薄い板の両面(表面と裏面)に金属膜(電極)を成膜して交流の電界を加えると、一定の周波数(共振周波数)の振動が発生する。このような素子を「水晶振動子」と呼ぶ。
水晶振動子の共振周波数は、水晶振動子の電極上に付着した物質の質量によって変化する。付着した物質の質量がごく軽い場合は、質量(電極面積当たりの質量)と共振周波数が比例する(厳密には質量の増加と共振周波数の低下が比例する)。この性質を利用し、バイオ分子が結合した標的分子の質量を周波数変化として検出するのがQCM法である。QCM法の感度は極めて高い。共振周波数がある程度まで高ければ、ナノグラム程度の質量変化を検出できる。
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