半導体商社の在庫状況については、コロナ以前では在庫日数が50日前後、在庫回転数が7.5回転程度を軸に小幅で増減を繰り返して推移していたが、半導体不足が深刻化した2020年第4四半期には在庫日数が40日程度、在庫回転数が9.5回転にまで達した。ただし、その後は半導体需要不足が叫ばれるなかでも在庫数は微増を続けていたといい、2022年に入ってからは大きく在庫量が回復。現在は在庫日数は60日程度、在庫回転数は6回転となり、「従来であれば過剰在庫といっていいレベルにまで来ている」という。
ただ、山地氏は、現在の水準について、「ニューノーマルにおける適正水準であるとみている」と説明。その背景として、「世界的に、これまで半導体メーカーから直接購入していた企業が商社を通して購入するようになったケースが拡大している。特にニッチなマーケットをターゲットにする電子機器メーカー、規模の小さい電子機器メーカーに関しては商社を活用し、在庫を持ってもらうという動きが広がってきている」と説明した。
山地氏は、今回、日本のエレクトロニクス産業の課題についても言及した。2021〜2026年の電子機器メーカーによる半導体購入額の年平均成長率(CAGR)をみると、日本はいずれのエンドマーケット向けでも、世界のCAGRを下回っているという。特にコンピュータについては、世界のCAGRが1.3%増となる一方で、日本は5%以上の大きなマイナス成長となっている。
2021〜2026年の電子機器メーカーによる半導体購入額の年平均成長率(CAGR)。エンドマーケット別にグラフ化。青が世界のCAGR、オレンジが日本のCAGRだ[クリックで拡大] 出所:ガートナージャパン山地氏は、「要するに、国内の半導体消費/需要が伸びない中で、半導体メーカーが苦戦をしているというのが、実態だろう。海外の比率が増えたのではなく、日本の比率が下がったため、海外の比率が上がっているようにみえている。あるいは海外の半導体メーカーを買収し、それにひもづいて獲得した海外顧客によって売上比率が増えているというケースもある。純粋に国内市場に加えて海外市場を開拓した訳ではなく、国内の顧客が減ったために海外の比率が増えているというケースが多いのではないか」との見解を示した。
その上で、「例えば、先端半導体の設備がないために日本は低迷した、供給ができないから低迷したという話ではなく、国内需要の低迷が日本の半導体産業そのものの地盤沈下を生んでいる一番の原因ではないかと考えている」と述べ、日本のエレクトロニクス産業再興のために、最も重要なのは、「半導体を使う顧客が国内にいるという状況を生み出すことだ。半導体を作るより、使う会社がいるということだろう」と強調した。
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