ルネサス エレクトロニクスはドイツ・ニュルンベルクで開催された組み込み技術の展示会「embedded world 2023」(2023年3月14〜16日)に出展し、Armの「Cortex-M85」搭載マイコンによるAI(人工知能)実装デモを初公開した。
ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)はドイツ・ニュルンベルクで開催された組み込み技術の展示会「embedded world 2023」(2023年3月14〜16日)に出展し、開発を進めるArmの「Cortex-M85」搭載マイコンによるAI(人工知能)実装デモを初公開。本格的なAIユースケースへの適用によって、その高い動作性能や利点を強調していた。
Arm Cortex-M85は、6CoreMark/MHz以上の高い周波数性能と高度なDSP(デジタル信号処理)/ML(機械学習)処理を可能にするMプロファイルベクトル演算拡張機能「Heliumテクノロジー」などが特長。これにより、エンドポイントAI処理などの高い演算性能を必要とするアプリケーションの高速動作が可能になるという。ルネサスは、現在、同プロセッサ搭載の新シリーズのRAマイコンを開発中で、2022年6月の「embedded world 2022」において実動作デモを「業界で初めて」(同社)展示していた。ただ、当時のデモで行っていたのはJPEG画像を取り込み、ディスプレイに送信するなどのシンプルな内容だった。
同社は今回、「要求の厳しいAIユースケースにおけるCortex-M85の性能を紹介することにより、Armマイコンのリーダーとしての地位をさらに強化する」と説明。ビジョンAIを手掛けるPlumeraiと共同開発した、人検出アプリケーションの動作デモを披露した。
ブースではカメラおよびCortex-M85搭載マイコンなどを搭載したボードとモニターを設置。カメラの映像から複数の人物を検出し、人物が移動しても素早く追跡している様子がモニターに表示されていた。人検出アプリケーションでは、推論速度は13フレーム/秒(fps)と高速を実現。Cortex-M85搭載マイコンは、Arm Cortex-M7ベースのものと比較し同アプリケーションの処理を約4倍高速に実行するという。
AI処理の高速化は、マイコンがより大きなAIモデルを実行可能になることから、より高精度の実現にもつながる。また、システムをより早くスリープ状態にできるため、さらなる電力消費の低減も可能となる。同社の説明担当者は、「これまで人物検出などのAIアルゴリズムを実行するにはMPUが必要だったが、本製品によって初めてマイコンで動作が可能になる。これによって従来よりはるかに低コストで、さらに消費電力も大幅に削減したソリューションが実現できる。一部の顧客からは、このテクノロジーによって『市場に大きな変革が起こるだろう』という声も上がっている」などと語っていた。
ブースではCortex-M85搭載マイコンのもう1つのデモとして、TensorFlow Lite for Microcontrollersとニューラルネットワーク用のフレームワークであるCMSIS-NNを使用した、モーター制御アプリケーションにおける故障予知保全のユースケースも紹介していた。
ルネサスはCortex-M85搭載マイコンである新シリーズのRAファミリーを2023年中にリリース予定だ。
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