TSMCは2023年6月30日、記者説明会を開催し、日本でのビジネス概況などを語った。TSMCジャパン社長の小野寺誠氏は、2022年の日本での売上高が38億米ドルに達したと報告。「地域別で最も売上高が伸びたのは日本」だと述べた。
TSMCは2023年6月30日、横浜市で開催した「TSMC Technology Symposium Japan 2023」に併せて記者説明会を実施し、同社 ビジネスディベロップメント担当シニアバイスプレジデントのKevin Zhang氏と、TSMCジャパン社長の小野寺誠氏が、TSMCの技術動向と日本でのビジネス概況について語った。
現在、TSMCが量産している最先端プロセスは3nm世代の「N3」である。2022年末に量産を開始した世代だ。2023年後半には、N3の派生プロセスとして「N3E」を展開する。N3Eは、5nm世代の「N5」に比べ、同じ電力で18%の速度向上、同じ速度で32%の電力削減を実現するという。ロジック密度は1.6倍、チップ密度は1.3倍になるとした。
売上高の比率が最も高いプロセスは、5nmになる。TSMCの2023年第1四半期(4〜6月期)売上高は167億2000万米ドル。そのうち5nmが31%、7nmが20%を占める。つまり、7nm/5nmの先端ノードだけで半分以上を占めていることになる。
2025年には、GAA(Gate All Around)を適用した2nm世代のプロセス「N2」の量産を開始する計画だ。Zhang氏は「われわれは、テクノロジーをスケジュール通りに提供していくことに注力する。量産を開始したあとも、常に工場を改善している」と強調した。
Zhang氏は日本での工場についても言及した。現在、TSMCは日米で工場を建設中だ。米国ではアリゾナ州に2つの製造棟を、日本では、製造子会社となるJASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)の熊本工場を建てている。「日本で、より最先端プロセスの工場を建設する予定はあるか」という報道陣の質問に対し、Zhang氏は「その可能性を除外はしない」と答えつつ、「まずは、公表している28/22nm、16/12nmの生産ラインを適用した(熊本)第1工場の立ち上げに集中する」と強調した。
さらに、「Rapidusも2nmでの生産を発表しているが、Rapidusとはどのように差別化するのか」という質問に対しては、「当社は独自のロードマップに沿って、N2の量産を2025年に開始する」(小野寺氏)、「(N2での生産を開始した際は)業界最高クラスの性能を持つロジックICを実現できると確信している」(Zhang氏)と述べるにとどめた。
なお、TSMCのプロセスに関する詳細は別途、報告する。
Zhang氏に続き、小野寺氏が日本でのビジネス概況を説明した。
小野寺氏は、日本の売上高が、TSMCジャパンの初年度である1997年は1億5000万米ドル、2010年は6億米ドル、そして2022年は38億米ドルと順調に増加していることを強調。「日本の顧客からの引き合いは強く、特に2022年については地域別で最も成長したのは日本だった」と述べた。
ウエハーの日本向け出荷枚数(12インチウエハー換算)は、累計で921万2000枚、2022年単体では130万枚に達した。さらに、2022年は製品テープアウトの件数は約2500件に上ったという。
TSMCは2022年6月、TSMCジャパン3DIC研究開発センターのクリーンルームを開設した。同センターは、TSMCにとって初の海外R&D(研究開発)拠点となる。小野寺氏は、「パイロットライン向けの装置が入り、計画通りに進んでいる。開発内容も拡大傾向にあり、エンジニアの採用も進めているさなかだ」と語った。なお、同センターでは、主に次世代パッケージ材料の開発に主眼を置くという。小野寺氏は「あくまで開発の主体は台湾であり、同センター単独でのロードマップは持っていない。日本のサプライヤーとの協業関係を深めつつ、台湾での開発を補完していくことが同センターの役割」だと語った。Zhang氏は、「台湾では、ウエハーレベルのパッケージング技術開発に注力している。日本では、特にパッケージ基板の分野で充実したエコシステムがあることから、シリコンとパッケージ基板の相互接続などが、R&D活動の大きなテーマとなっている」と付け加えた。
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