半導体・電子サプライチェーン事業を展開する米国Fusion Worldwideは、日本市場への本格展開に伴うメディア向けの事業説明会を実施した。同社は、品質/真贋検査を徹底していて、2001年の創業以来、偽造品出荷数は「0件」だという。
半導体/電子部品の調達事業を展開する米国Fusion Worldwide(以下、FWW)は2023年7月12日、メディア向けの事業説明会を実施した。
FWWについて、同社 日本地域のセールスマネージャーを務める矢野明歌氏は「FWWは、コンピュータハードウェアや半導体/電子部品などの“流通”事業を行う会社だ。日本で『商社/ディストリビューター』というと、特定企業の販売代理店の役割を持っていると認識される。FWWは、特定企業との提携はせず、オープンマーケット品のみを扱っているため、“流通会社”だと名乗っている」と説明した。
同社の2022年9月期(2021年10月〜2022年9月)の売上高は、約30億米ドル(約4166億円)。日本の主要半導体/エレクトロニクス商社と比較すると、トーメンデバイスの2023年3月期通期(2022年4月〜2023年3月)の売上高(約4176億)に並ぶ規模だ。
矢野氏は、FWWの強みとして「徹底的な品質/真贋検査」を紹介した。FWWは、2001年の設立以来、偽造品の出荷数が0件で、品質監査も786回中786回通過している。
FWWは、全ての自社倉庫に同水準の検査設備(外観検査/RoHS/アセトン検査/断層検査/X線検査/破壊検査など)を設置していて、品質/真贋検査を全て自社で実施できる体制を整えている。これによって、サードパーティーに依頼した場合であれば納品までに2週間〜1カ月かかるところを、「最短で1週間、平均2週間で納品できる」(矢野氏)という。
同社は、有事に備えて、サプライヤーから納品された製品の外箱/ラベル/検査過程に至るまでを写真で保存している。現在、半導体ダイの正規品記録保有数は14万2000個以上、出荷の記録写真保存数は1100万個以上に上るという。
同社の日本/韓国担当 シニア・セールス・ディレクターのオリビア・ジュ氏は、「FWWに対して偽造品を納品したサプライヤーがいた場合、企業名と内容を公開した上で、今後二度と取引をすることはない」と説明した。サプライヤーの取引社数は日々変動しているものの、取材日(2023年7月12日)時点では約8000社だという。
また、同社は、万が一偽造品を提供してしまった場合に備えて、特定保険制度を設けている。同制度では、FWWが顧客に偽造品を提供したことが判明した場合、1件当たり最大1500万米ドル(約21億円)の補償金を支払う。ジュ氏は「特定保険制度は、あくまでもFWWが顧客に対して“責任を持つ”という意味で設置している。そのため、保険の有無による製品の価格調整は行っていない」と説明した。
同社は2022年2月、品質/真贋検査に強みを持つProsemiを買収し、検査体制を強化した。同氏は、「コロナ禍の半導体不足/サプライチェーンの混乱によって、市場に偽造品が増えた。昨今の偽造品は、実際に動作するものまで出てきていて、見分けるのが難しい。しかし、偽造品は、何か予期せぬ事象が起きた際の動作に問題が起こる。FWWは、今後も強みの検査力を生かし、市場に貢献していく」と語った。
FWWは、2022年1月に日本国内で事業を開始し、同年2月には日本法人Fusion Trade Japanを設立した。日本では、製品の質や安全性への要求が高い自動車分野や医療分野、半導体製造装置分野などの顧客が多く、自動車分野では既に100社以上に提供しているという。
ジュ氏は、日本市場参入の背景について「日本は、世界3位のGDPを誇る先進国で、多くの自動車/機器メーカーが存在する。また、日本企業は、品質にこだわりが強いため、品質/真贋検査を強みとするFWWとの親和性が高く、ずっと参入したいと考えていた」と説明。日本進出が2022年になった理由について、「日本には、対面でのあいさつを重んじ、信頼関係を築く文化がある。日本文化を尊重し、日本企業へのあいさつ回りをしていた結果、日本進出までに時間がかかった」と続けた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.