2023年6月に開催された「VLSIシンポジウム2023」は大盛況であった。本稿では、筆者が“ブレークの予感”を抱いた裏面電源供給技術と、3D(3次元) NAND/DRAM技術に焦点を当てて、解説する。
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「VLSIシンポジウム2023」(以下、VLSI2023)が、2023年6月11〜16日に、リーガロイヤルホテル京都で開催された(写真)。
VLSIシンポジウムは、コロナ禍の2020年と2021年は完全バーチャルでのオンライン学会だった。昨年2022年は、ハワイにて、現地とバーチャルを併用したハイブリッド開催となった。そして、ことし2023年は、「学会を現地開催に戻す」ことを第1方針とした。ただし、学会終了後の翌週からオンデマンドでの視聴も可能である。従って、VLSI2023は、「現地開催を重視したハイブリッド開催」ということになるだろう。
筆者は、コロナ前の2019年以来、4年ぶりにリアルにVLSIシンポジウムに参加したが、あまりの参加者数の多さに度肝を抜かれた。多くの発表会場では座席が足りずに立ち見が出るほどであり、2カ所で行われたバンケットでは、会場に入りきれないほどの人であふれかえっていた。
図1のタイムテーブルで示したように、6月13日(火)の夜に、プレス・ディナーが行われた。そこで配布された資料を基に、投稿・採択論文数および参加者数を紹介しよう。
図2に、Technology分野における投稿・採択論文数の推移を示す。VLSIシンポジウムは、偶数年にハワイ、奇数年に京都で開催されてきた。その際、投稿論文数は、ハワイ開催の方が多いという傾向があった。
ところが、ことしのVLSI2023の投稿論文数は、昨年のハワイ開催の232件より41件多い273件となった。この273件は、過去10年間で最多の投稿論文数である。その結果として、採択論文数は、過去最多の89件となった。ただし、採択率は33%と狭き門であり、採択論文のクオリティーを落としているわけではない。
次に、Circuits分野の投稿・採択論文数の推移を見てみよう(図3)。Technology分野と同様に、Circuitsでも、ハワイ開催の時の方が京都開催より投稿論文数が多い傾向にあった。
ところが、Circuitsでも、VLSI2023の投稿論文数は、昨年の348件より11件多い359件となった。そして、この359件は、京都開催では過去最多の投稿論文数だった。また、採択論文数も過去10年間では最多の123件になっている。ただし、Technologyと同様に、採択率は34%と狭き門であることは変わらない。
このように、VLSI2023では、TechnologyもCircuitsも、投稿・採択論文数が異常と思えるほど増加している。その原因について、本連載のコラム「投稿論文が激増した「VLSIシンポジウム2023」、シンガポール国立大が台頭」で、「もうコロナは終わった、(観光も兼ねて?)京都に行くぞ!」という空気に満ち、それで爆発的な投稿数につながったと推測した。
それに加えて、昨今の半導体の動向として、トランジスタのGAA(Gate All Around)、トランジスタの裏面から電源を供給する裏面電源供給ネットワーク、3D ICなど、世界的に研究開発が進められている技術が多数あることを挙げた。要するに、半導体の技術が大きな転換点を迎えていることが、投稿論文数の増大に寄与しているとも推測した。
今回、VLSI2023にリアルに参加した筆者は、上記2つの要因が、どちらも論文数や参加者数の増大につながっていると確信した。本稿では、歴史的転換点にある、または迎えようとしている半導体技術のいくつかを紹介したい。その前に、異常に多かった参加者数について説明する。
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