Intelは、“Intel PowerVia Technology: Backside Power Delivery for High Density and High-Performance Computing”(論文番号T6-1)というタイトルで、テクノロジーノード「Intel 4」に、PowerViaと呼ぶBSPDN方式を採用したロジック半導体について発表した(図9)。
まず、Fig.1に、3通りの電源供給方式を示している。(a)は電源供給線をトランジスタの下に埋め込んだBPR、(b)はBPRを形成した上で、そのBPRとBSPDNをつなぐ方式、(c)はPowerViaを形成し、そこに直接BSPDNから電力を供給する方式である。
このPowerVia+BSPDN方式については、Fig.4にプロセスフローが示されている。
(a)まず、FinFETとPowerViaを形成する
(b)FinFETとPowerVia上に、信号線だけの多層配線を形成する
(c)このウエハーをひっくり返してキャリアウエハーに張り合わせ、FinFETとPowerViaが形成されているウエハーを裏面から削り、PowerViaを露出させる
(d)PowerViaに接続するように、電源供給ラインを形成する
このようなプロセスで製造された“Intel4+PowerVia”のロジック半導体のTEM像がFig.3である。下方にトランジスタと信号線から成るFrontsideがあり、その上に太い電源供給線が形成されたBacksideがある。
Fig.2では、“Intel 4”と“Intel4+PowerVia”の比較がなされている。Contact Poly Pitchはどちらも50nm、Fin Pitchも両方とも30nmである。ところが、M0 Pitchでは、“Intel 4”が30nmであるのに対して、“Intel4+PowerVia”が36nmになっている。つまり、PowerViaの御利益で、M0 Pitchをリラックスして形成することができたことになる。さらに、HP library heightは、“Intel 4”が240nmであるのに対して、“Intel4+PowerVia”が210nmと、30nm分シュリンクできていることが分かる。
そして、Fig.5では、nMOSとpMOSの電気特性において、“Intel 4”と“Intel4+PowerVia”に差がないことを示している。加えて論文には、IRドロップが30%改善され、トランジスタの動作速度が6%向上したと書かれている。
このように、IntelのPowerViaは、当初の目的通り、微細化に恩恵がある上、IRドロップが低減され、トランジスタの性能向上にも寄与することが分かった。そのため、Intelは、PowerViaの適用を20Aからではなく、Intel 4に前倒しすることをVLSI2023で発表した。
BSPDNを早期に量産適用する流れは、Intelだけでなく、TSMCやSamsungにも波及するものと思われる。
では、次は、DRAMの注目発表に移ろう。
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