最先端EUV(極端紫外線)露光装置(以下、EUV)は、2019年にTSMCが「N7+」世代に初めて量産適用した。その後、先端ロジック半導体には、当たり前のようにEUVが使われるようになってきている。
では、DRAMへのEUVの適用は、どうなっているのだろうか? その疑問に答えてくれたのが、Samsungの発表“14nm DRAM Development and Manufacturing”(T18-1)である(図10)。
まず、SamsungはFig.1で、N-4世代からN世代にかけて、DRAMのデザインルールが68%にシュリンクしたことを示した。ここで、筆者は、N-4世代が20nm、N-3世代が19nm(1X)、N-2世代が18nm(1Y)、N-1世代が15.6nm(1Z)、N世代が13.8nm(1a)と解釈している(カッコ内は各世代の略称)。
次にSamsungはFig.2で、N-1(1Z)でEUVを1層、N世代(1a)でEUVを5層使うことを示している。そして、EUVを使うことの効果は、Fig.4にまとめられている。
(a)まず、EUVを使えば、複雑なDUV+マルチパターニング(MP)を行う必要がない。(b)次に、EUVを使うことによって、リソ工程を25%削減できる。(c)加えて、プロセスフロー全体でも工程数を19%削減できる。(d)その上で、DUV+MPより、EUVの方が、ライン、ピラー、ホールを鮮明に解像できる。
このように、先端DRAMの製造にEUVを使うメリットが大きいため、コストの問題がクリアできるのなら、先端ロジックと同様に、DRAMにもEUVの量産適用が広がっていくだろう。
ただし、DRAMの微細化には大きな問題がある。Fig.3に示されているように、DRAMのメモリ動作を行うためのキャパシターの容量が55%と小さくなるのに対して、キャパシターのアスペクト比(縦と横の比)が130%も増大するからだ。このような高アスペクト比のキャパシターを形成し続けることができるのだろうか?
NANDは、2次元の微細化が限界に達したため、3次元化した。DRAMも、もしかしたら、NANDと同じように3次元化することになるかもしれない。
Samsungは、“Ongoing Evolution of DRAM Scaling via Third Dimension- Vertically Stacked DRAM -”(論文番号TFS1-1)で、3D DRAMの可能性を示唆した(図11)。Samsungは、3D DRAMのことを“Vertically Stacked DRAM”と呼んでいるが、本稿では3D DRAMと言うことにする。
Samsungは、Fig.1(b)で、今まで通りの2次元の微細化を続けると、N+4世代以降に、キャパシターが限界に達することを示した。ここで、DRAMの世代は、前節に引き続いて、N世代が13.8nm(1a)、N+1世代が12.3nm(1b)、N+2世代が11.2nm(1c)、N+3世代が10nm(1d)、N+4世代が9nm?(1e?)と解釈している。
もし、今まで通りの2次元の微細化がN+4世代で限界となった場合、メモリ密度を増大するためには、Fig.2のように、DRAMを縦に“Cubic Block”のようにStackedするアイデアが示されている。
そして、3D DRAMには、次に示す二つの方式があることをFig.4で説明している。(a)一つはBitline(BL)が垂直なタイプ、(b)もう一つはWordline(WL)が垂直なタイプである。どちらも、キャパシターは水平方向に短冊のように形成される。
Fig.5は、実際に3D DRAMを形成した時の断面TEM像を示している。(a)はチャネル付近の構造、(b)は垂直WLタイプにおける階段状の水平BL、(c)は垂直BLタイプのチャネルとWLの積層構造を、それぞれ示している。Samsungは、垂直BLタイプと垂直WLタイプには、それぞれ長所と短所があると言っており、どちらが有利かは、まだ分からないようだ。
しかしどちらが選択されるにせよ、図8に示したように、3次元化したメモリセルと周辺回路を別々に形成して、ハイブリッドCu接合でつなぐ“Cell on Peri(CoP)”構造が実現できれば、セル面積の最大化を図ることができる。
DRAMは約2年で1世代、先端を更新している。従って、2次元の微細化が限界に達するN+4世代は、単純計算で8年後になる。ということは、2030年頃には、3D DRAMが世の中に登場することになるのかもしれない。
一方、DRAMより一足早く3次元化したNANDでは、斬新なプロセス技術が登場している。それは一体どのようなものか?
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