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米大学がSiC専用の研究/製造センター建設へ次世代パワー半導体も“自前”に(2/2 ページ)

» 2023年08月22日 15時30分 公開
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利点も多いが、課題も多いSiCデバイス

 低損失で高速スイッチングが可能なSiCは、パワー半導体の材料として期待されている。特に、輸送業界(飛行機や電車、自動車、ドローンなど)では、より軽量かつ電力効率のよいシステムに寄与するとされる。

 さらに、SiCはシリコンよりもはるかに高い温度や電圧で動作可能なため、既存のシリコンベースの半導体では不可能だったセンシングや制御、監視システム、電力インフラを実現する可能性が広がる。

 これまで、SiCデバイスの使用を制限する要因となっていた主な課題は、欠陥のないウエハーの製造が難しいということだ。Mantooth氏は、「欠陥を管理する必要があるため、現在8インチ(200mm)SiCウエハーの開発が進められており、SiCはシリコンと比べて製造コストがさらに高くなっている」と述べる。「だが、技術が進化し、規模の経済に到達できれば、SiCのコスト効率は今よりも向上し、幅広いアプリケーションでの採用が進むだろう」(同氏)

 Mantooth氏は、SiCデバイスの設計と製造には、シリコンに比べて明確な課題があると述べる。シリコンでは、適度なプロセス温度でドーパント(微量不純物元素)を拡散できるため、接合深さやキャリア密度、移動度を正確に制御できる。しかし、SiCでは、ドーパントの移動性が低く、拡散が制限されるため、望ましいドーピングプロファイルと深さを達成するために複数回のイオン注入が必要となる。その結果、追加のプロセスが発生し、コストが高くなる。

 さらに、イオン注入に必要なエネルギーによって、シリコンで使用する自己整合ゲート技術を直接適用することができなくなる。このため、SiCの集積回路のサイズも制約されてしまう。

 Mantooth氏は、「こうした課題があるにもかかわらず、アーカンソー大学の国立SiC研究/製造センターの設立は、SiCデバイスの進歩を加速し、さまざまな分野の最先端技術の開発に貢献すると期待される」と述べている。

 SiCの分野は、各社/研究機関が継続して研究開発に取り組んでおり、ブレークスルーと進歩が期待される。Mantooth氏は、「より高品質な出発原料の実現に向けた新たな材料やウエハーの開発プロセスは、特に興味深い分野だ。SiCの研究開発のエコシステムにおける成長には目を見張るものがある」と語った。

【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】

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