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5G 人からモノへ 〜「未踏の時代」迎えた無線技術 特集

最大4ビーム多重に対応したミリ波チップを開発5G基地局の無線子局向け

富士通は、最大4ビーム多重に対応可能な5G(第5世代移動通信)無線子局(RU)向けの「ミリ波チップ」を開発した。この素子を搭載したRUは、従来に比べ装置サイズを半分以下にでき、消費電力も30%削減できることを確認した。

» 2023年09月05日 10時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

RUの装置サイズは半分以下に、消費電力も30%削減

 富士通は2023年8月、最大4ビーム多重に対応可能な5G(第5世代移動通信)無線子局(RU)向けの「ミリ波チップ」を開発したと発表した。この素子を搭載したRUは、従来に比べ装置サイズを半分以下にでき、消費電力も30%削減できることを確認した。

 富士通は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が実施する「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/ポスト5G情報通信システムの開発(委託)」において、2020年6月から2023年6月まで、RUを高性能化するための技術開発に取り組んできた。

 従来のミリ波チップでは、1つの素子で1ビームを生成していた。このため、RUでビーム多重を実現するためには、複数個の素子を用いる必要がある。これにより装置が大きくなり、消費電力も増えるなど、いくつかの課題があった。

 そこで富士通は、マルチビーム多重に対応したミリ波チップを開発した。具体的には、4つの入力信号を中間周波数(IF)帯回路によって集積、4つのIF帯入力信号について振幅と位相を、それぞれ独立して制御する。その上で、4つのIF帯信号をミリ波帯に変換すると同時に合成。この合成信号を1つのミリ波帯高出力増幅器で、より大きく変換させることにより、最大4ビーム多重を実現した。

 開発したミリ波チップを富士通製RUに実装し、4ビーム多重での電波発射を行った。この結果、従来型のRUに比べ装置サイズは半分以下で、10Gビット/秒以上の高速かつ大容量通信が行えることを確認した。小型で消費電力を抑えたミリ波RUを実現できることが分かった。

従来の素子を用いたRU(左)と、開発した素子を搭載したRU(右)との比較 従来の素子を用いたRU(左)と、開発した素子を搭載したRU(右)との比較[クリックで拡大] 出所:NEDO、富士通

 富士通は2023年8月から、開発したビーム多重技術を搭載した基地局装置の開発に取り組む。そして、2024年度中にもRUを商用化し、グローバル市場でビジネスを展開していく。さらに、開発した技術を基地局用親局(CU/DU)装置にも適用していく予定である。

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