TopoLogicは「CEATEC 2023」(2023年10月17〜20日、幕張メッセ)で熱流センサー「TL-SENSING」を展示した。TL-SENSINGは従来の熱流センサーと比較して応答速度は約100倍、製造コストは数百分の1以下だ。TL-SENSINGは、「CEATEC AWARD 2023」のスタートアップ部門で準グランプリを受賞している。
TopoLogicは「CEATEC 2023」(2023年10月17〜20日、幕張メッセ)で熱流センサー「TL-SENSING」を展示した。高速な応答と低い製造コストが特長で、「CEATEC AWARD 2023」ではスタートアップ部門で準グランプリを受賞した。
TopoLogicは2021年7月に設立された東京大学発のスタートアップで、新規材料であるトポロジカル物質の社会実装を目指している。トポロジカル物質は独特の電子バンド構造を持ち、従来の代表的な材料である絶縁体/導体(金属)/半導体のいずれにも見られない現象を起こす。
その特有の性質を利用して開発を進めているのが熱流センサーのTL-SENSINGだ。最大の特長は高速応答で、熱の変化を0.01秒未満で検知できる。既存の熱流センサーの100倍以上の速度だという。トポロジカル物質の特性によって素子の厚みを約200nmまで薄くできるため、わずかな熱の変化も検出可能になったとする。
用途としては主に車載用バッテリーやパワー半導体の安全管理などを想定している。そうした用途で現在主流なのは温度センサーだが、測定対象に十分な温度変化が表れてからでないと異常を検知できない。TL-SENSINGであれば熱エネルギーの変化が始まってすぐに異常を検知できるため、より安全性を高めることができるという。
低コストで製造できることも特長だ。既存の熱流センサーは部品数が多く製造工程が複雑なため、価格は1個あたり数万円からと高額になる。一方、TL-SENSINGはウエハー上にトポロジカル物質の薄膜を形成するシンプルな製造方法で、量産性が高い。ブースで説明を行っていたCEO(最高経営責任者)の佐藤太紀氏は、「注文個数によっては数百円で量産することも可能になるだろう」と語る。
ブースでは、TL-SENSINGと一般的な温度センサーを用い、検知速度の比較デモが行われていた。ヒーターの電源を入れると、温度センサーが温度変化を検知していない段階で、TL-SENSINGはすぐに熱の変化を検知した。
TopoLogicは現在、複数の企業と提携してTL-SENSINGの実証実験を進めている。
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