AmkorはAppleとの協業により、アリゾナ工場の初期生産能力に関する取り組みを進めている。Amkorの工場の稼働開始時には、Appleが最初の最大顧客となる予定だ。
AppleのCOO(最高位執行責任者)であるJeff Williams氏は2023年11月末に、事前に用意したコメントの中で、「Appleはここ米国で、新時代の最先端製造を構築するための支援に尽力している。AppleとAmkorは過去10年以上にわたり、パッケージングチップで協業してきた。そして今、このパートナーシップによって、米国最大のOSAT最先端パッケージング工場が実現しようとしている」と述べている。
TSMCは1年前、AppleやAMDなどの顧客企業からの支援を受け、アリゾナ州の2つの半導体工場への投資を約400億米ドルまで増額し、米国の国内半導体製造を復活させるための取り組みを刺激した。
TSMCのCEOであるC.C. Wei氏は、AmkorとAppleと共同で発表した声明の中で、「Amkorがアリゾナでわれわれとともに半導体業界の未来のために投資してくれたことに対し、称賛を送りたい」と述べている。
OSATの頭字語は、半導体パッケージングがいかにアジアにシフトしてきたかを示している。世界最大規模の組み立て/テストメーカーであるAdvanced Semiconductor EngineeringやAmkorは、自社工場の大半を中国や台湾、韓国などの国に置いており、またパッケージング分野の労働集約度は高いため、米国に数十億米ドル規模の投資を行っているTSMCやSamsung Electronicsなどアジアの半導体メーカーの後を追うことには消極的だ。
米国の組み立て/テストメーカー不足は、安全なエレクトロニクスサプライチェーンの再建を目指す米国の計画における障壁となっている。
SemiAnalysisのチーフアナリストであるDylan Patel氏は、EE Timesの取材に応じ、「パッケージングは一般的に、ウエハー製造よりも労働集約的である。このためメーカー各社にとって、米国でのパッケージング工場設立を正当化することは非常に難しい。このような量産パッケージング工場はとてもユニークな存在であり、米国サプライチェーンの回復実現を支援してくれるだろう。人件費は収益性に影響を及ぼすが、顧客企業はサプライチェーン強化のためであれば負担をいとわず、また補助金も打撃を緩和してくれるだろう」と述べている。
Amkorによると、同社のアリゾナ工場は、TSMCやIntel、Applied Materials、ASMLをはじめとする半導体メーカーやツールサプライヤーの強力なエコシステムに近接するという。Intelは、アリゾナ州チャンドラーに高性能パッケージング工場を保有している。
Semiconductor AdvisorsのプレジデントであるRobert Maire氏は、EE Timesの取材に応じ、「Amkorにとっては、工場を運営するための人材を見つけることがハードルになるかもしれない」と述べる。
「よほど高度に自動化されない限り、現実的な問題を抱えることになるだろう」とMaire氏は続ける。「米国には、(組み立て/テストなどの分野で)熟練者がいない。TSMCのように、Amkorも海外の技術者をアリゾナ州に呼び寄せて、生産体制を強化する必要があるかもしれない」(同氏)
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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