トルンプは、仙台市に新たな技術拠点として「宮城テクニカルセンター」を開設した。同社製品の修理や点検を担う施設で、将来的にはエンジニア20人程度を含む約30人が就業する予定だ。
ドイツの板金加工機大手メーカーTRUMPFの日本法人であるトルンプは2023年12月8日、仙台市に新たな技術拠点として「宮城テクニカルセンター」を開設した。同社が手掛ける半導体製造装置向けプラズマ電源などの修理/点検を行う施設だ。同施設の開業に伴って、川崎市に設けていたサービスセンターは閉鎖する。投資金額は数億円。
修理と点検を行うエリアは4m×4mの「キューブ」と呼ばれる区画に分かれていて、キューブは施設内に11区画ある。各キューブには150kVAの給電設備と100リットル/分の冷却用の給排水設備が2箇所ずつ備えられ、大型の製品を移動させずに左右どちらからでも給電/給排水が行えるようになっている。
従来の製品修理拠点だった川崎市のサービスセンターにはキューブは3区画あり、電源容量は施設全体で210kVAだった。今回新設した宮城テクニカルセンターは延床面積が従来の約3倍になり、電源容量も大幅に増強されたという。トルンプの担当者は「従来、大型製品の修理の際にそのキューブだけで電源容量がいっぱいになってしまい、他のキューブで並行して作業できないという問題があった。宮城テクニカルセンターは理論上、11区画のキューブ全てで並行した作業も可能になる」と説明した。作業内容が簡単で部品もすぐにそろえば、修理は数日で終了することもあるという。
宮城テクニカルセンターの開業時点では、修理/点検担当のエンジニアは5人、施設全体では9人が就業している。将来的にはエンジニアは20人程度、施設全体では30人程度の体制を目標としていて、採用活動は仙台市を中心に行うという。
技術拠点の拡大/移転にあたり仙台市を選んだ大きな目的は、主要取引先である東京エレクトロン宮城との連携強化だという。2023年12月6日のオープニングセレモニーに登壇したトルンプ代表取締役社長の高梨真二郎氏は「顧客サポートの質と量、スピードを向上させるために、仙台に技術拠点とオフィスを構えることにした」と説明した。
来賓として登壇した東京エレクトロン宮城 シニアフェロー 兼 宮城技術革新センター センター長の永関一也氏は、2024年以降に半導体市場の急速な拡大が見込まれることに触れて「東京エレクトロン宮城にとって、トルンプ製品の必要台数も増えるだろう」とし、「ビジネスの拡大はさまざまな問題を伴うものだが、宮城テクニカルセンターはそうした問題をスピーディーに解決するために有益なものになる」と期待を込めた。
宮城県内では他にも、黒川郡大衡村に台湾の半導体ファウンドリー大手であるPowerchip Semiconductor Manufacturing Corporation(PSMC)の工場建設が予定されている。高梨氏はこうした盛り上がりを踏まえ、「半導体の話題はどうしても熊本に偏ってしまっているが、1カ所に拠点が集中することはリスクが高い。宮城は土地にもゆとりがあり、東北大学と大企業の間で就職や共同研究という流れもある。国内の半導体産業のもう一つの拠点として大きな可能性を感じている」と語った。
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