矢野経済研究所は、カーボンナノチューブ(CNT)の世界市場を調査し、2023年は前年比150.4%の1万986トン(メーカー出荷量ベース)になる見込みだと発表した。車載用リチウムイオン電池(LiB)向けなどで、2028年には5万トン超の規模に拡大すると予測した。
矢野経済研究所は2024年1月、カーボンナノチューブ(CNT)の世界市場を調査し、2023年は前年比150.4%の1万986トン(メーカー出荷量ベース)になる見込みだと発表した。車載用リチウムイオン電池(LiB)向けなどで、2028年には5万トン超の規模に拡大すると予測した。
今回の調査は、単層CNTと多層CNTに加え、レゾナック製で直径100nm超の正負極用導電助剤「VGCF(気相法炭素繊維)」を含めた広義のCNTを対象とした。調査期間は2023年8〜11月である。
CNT市場は、車載用LiBの導電助剤用途で需要が拡大する。2021年にはxEV(電動車)の世界生産台数が大幅に伸びた。しかし、2022年には主要国/地域で補助金政策の変更などにより、xEV市場の伸び率は鈍化傾向で、2023年も減速感が強まっているという。
CNT需要はxEVの市場動向に影響されるものの、韓国LiBメーカーで多層CNTの採用が拡大したこともあり、2023年は前年実績を大きく上回ることになりそうだ。特に多層CNT市場は、前年比142.8%の1万940トンを見込む。多層CNT市場を地域別構成比でみると、中国市場が約75%を占める。需要地としては欧州市場に向けた出荷も増加する。北米市場での需要も増えており、相対的に日本市場は低下しているという。
今後も多層CNT需要は引き続き高い水準で推移するとみられる。車載用LiBの正極材における「リン酸鉄リチウム」の復調と「三元系」のハイニッケル化などが需要をけん引する。単層CNT需要についても、シリコン負極材への導電助剤適用などにより、車載用LiB向けが本格化すると予測した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.