図3に、ASMLの四半期毎の露光装置別の売上高比率とその金額を示す。図3Aから、ASMLの稼ぎ頭はEUVとArF液浸であることが分かる。上下動が大きいが、どちらも売上高比率30〜50%の間で推移している。一方、最も出荷台数が多かったKrFは10%前後となっている。
次に、図3Bに示した各露光装置の売上高を見てみると、2023年に入ってArF液浸が急拡大しており、Q2とQ3はEUVを上回っていることが目を引く。
ここで、各露光装置1台当たりの価格を計算で求めてみた。金額の単位は百万ユーロで、1ユーロは160円とした。計算の結果、i線が430万ユーロ(約7億円)、KrFが1000万ユーロ(約16億円)、ArFドライが1960万ユーロ(約31億円)、ArF液浸が6120万ユーロ(約98億円)、EUVが1億5000万ユーロ(約240億円)となった。先端になるほど露光装置価格は高い。とんでもなく高い。他の製造装置と比べると、1桁〜2桁ほど高価なのだ。
そして、EUVは1台当たり240億円もすることがASMLの売上高の向上に大きく貢献している。また、ArF液浸も100億円弱もする上、出荷台数がEUVの2倍以上あるため、これまたASMLの売上高に大きく寄与していると言える。
では、このような高価な露光装置を、どの国/地域が、どれだけ購入しているのだろうか?
図4に、ASMLの四半期ごとの地域別の売上高比率とその金額を示す。まず、図4Aをみると、2022年Q1に一瞬だけ中国が台湾と韓国を抜いた。しかし、それを除けば、2020年Q4〜2023年Q1の間は、TSMCが存在する台湾とSamsungおよびSK hynixを擁する韓国が、売上高比率の1位と2位を占めていた。
ところが、2023年Q2以降、中国の売上高比率が急拡大し、台湾と韓国を抜き去って中国が1位を占めた。その中国比率は、Q3に46%、Q4も39%となった。要するに、ASMLにとって、2023年後半は、中国が最大のカスタマーになったわけだ。
中国は、米国による輸出規制によりEUVを購入することができない。そして、前節までに述べた通り、2023年後半はArF液浸の出荷台数と売上高が急増した時期である。つまり、2023年後半に、ArF液浸の売上高が急増し、それと同時期に中国への売上高が急拡大した。このことから、SMICなどの中国半導体メーカーが、駆け込みでArF液浸を爆買いしたと推測できる。
では、ArF液浸を爆買いしたSMICは、今後どのような動きを見せるだろうか? 少し脇道に逸れるが、SMICの今後を展望してみたい。
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