金沢工業大学と日清紡マイクロデバイスは、マイクロ波方式のワイヤレス電力伝送(WPT)用途に向けた「高周波整流器IC」の開発を始めた。IoTセンサーやFA機器などへの無線給電を実現していく。
金沢工業大学工学部電気電子工学科の伊東健治研究室と日清紡マイクロデバイスは2024年2月、マイクロ波方式のワイヤレス電力伝送(WPT)用途に向けた「高周波整流器IC」の開発を始めたと発表した。IoT(モノのインターネット)センサーやFA(ファクトリーオートメーション)機器などへの無線給電を実現していく。
マイクロ波方式WPTは、ケーブルなどを使わず電波の送受信によって電力を伝送する技術。送電アンテナから発せられた高周波電力を受電アンテナで受信、整流回路を介して直流電力に変換し、受電器に接続されたIoTセンサーなどを動かすことができる。
2022年の電波法省令改正により、920MHz帯や2.4GHz帯、5.7GHz帯を利用したマイクロ波方式WPTの実用化が始まった。ところが、マイクロ波方式WPTに特化した実用レベルの整流器ICを入手するのが難しく、現状では汎用のダイオード製品を用いるケースが多いという。このため、WPTとして十分な性能が得られないなど、課題もあった。
金沢工業大学はこれまで、「微弱電力に対応する高効率整流技術」や「ワット級の大電力に対応する高効率整流技術」を開発してきた。そこで今回、金沢工業大学が培ってきた最先端のアンテナおよび整流回路技術と、日清紡マイクロデバイスが保有する独自のGaAs(ガリウムひ素)ウエハープロセス技術を融合し、小電力から大電力まで高い整流効率で動作するWPT向けの整流器ICを開発することにした。
具体的には、2種類の高周波整流器ICを開発する。その一つが「920MHz帯の微弱電力対応整流器IC」である。金沢工業大学が設計する専用アンテナと組み合わせた場合、シリコンSBD(ショットキーバリアダイオード)に比べ、ピーク効率が21%、感度が5dB(伝送距離で1.8倍相当)に、それぞれ向上するという。耐電力特性も15dBアップした。
もう一つは「5.7GHz帯の1W対応整流器IC」。整流器IC単体で、入力電力1mWにおいて変換効率は20%以上を達成、最大変換効率約70〜80%で1Wの入力電力まで使用できる見込みである。
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