今回から、第4章第1節第3項「4.1.3 部品実装・設計時の注意点」の2番目の項目、「4.1.3.2 電気性能」の概要を説明する。
電子情報技術産業協会(JEITA)が3年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2022年度版 実装技術ロードマップ」(書籍)を2022年7月に発行した。本コラムではロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、ロードマップの概要を本コラムの第377回からシリーズで紹介している。
第448回からは、第4章「電子部品」の概要説明を始めた。前回(第452回)は第4章第1節第3項「4.1.3 部品実装・設計時の注意点」の最初の項目である「4.1.3.1 熱設計」の概要をご紹介した。
今回からは2番目の項目である「4.1.3.2 電気性能」の概要をご説明していく。この項は「(1)インダクタ実装時の注意点」と、「(2)3端子貫通型フィルタ接続と実装のポイント」の2つの内容で構成してある。
インダクタの中でも電源用インダクタ(パワーインダクタ)を本稿では取り上げる。パワーインダクタは磁性体のコアに導線を巻き付けた構造をしている。導線に電流を流すと導線の周囲に磁束が発生する。その多くはコアの内部を通過し、一部は外に漏れる(漏れ磁束)。
電源用インダクタを並べてレイアウトする場合、インダクタ間の距離が短くなると、隣接するインダクタの漏れ磁束が干渉してインダクタンスの値が低下する。雑音の発生源となることもある。
対策の一つは、漏れ磁束の少ないタイプの電源用インダクタを使うことだ。大別すると「レジンシールド(セミシールド)タイプ」「フルシールドタイプ」「金属一体成型タイプ」がある。
レジンシールド(セミシールド)タイプは、フェライトや軟磁性金属などの磁性粉を混ぜたレジン(樹脂)によって導線(巻線)を封止した。磁気シールドの効果は大きくないものの、コストの上昇を抑えられるというメリットがある。
フルシールドタイプは、通常のコア以外にフェライトのシールドコアを追加することで、理論的に漏れ磁束をゼロに近づけた。磁束の漏れは通常のコアとシールドコアのギャップ部などに限定される。コストはレジンシールドタイプよりも高くなる。
金属一体成型タイプは、結合材(バインダ)と難磁性金属粉を混ぜた材料に空芯の巻線(コイル)を埋め込み、一体成型した。フルシールドタイプと違ってギャップ部がない。このため、磁束の漏れはフルシールドタイプよりもさらに小さい。
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