現在量産されているSTM32のマイコン/プロセッサは、全てAIの実装が可能だ。今後リリースする製品についても方針は同じだという。
「AIというと高い性能が必要というイメージがあると思うが、高性能でなくてもAIを動かせるケースはある。求めるレスポンスの速さや扱うデータによっては、ローエンドに位置付けるマイコンでも実現できる」(木村氏)
STは現在、エッジAIに向けたSTM32マイコンの新シリーズ「STM32N6」を開発中だ。汎用マイコンでありながらNPU(ニューラルプロセッシングユニット)を搭載し、推論処理能力が大幅に向上しているという。他社製のAIアクセラレーター搭載プロセッサと同等以上の推論処理能力を有しているとして、木村氏は「今までマイコンでは到達しえなかった領域だ」と自信を見せる。高性能の一方で低消費電力/低コストというマイコンの利点は維持し、上記プロセッサと比べて電力効率は12倍、外付け部品を加味したコスト効率は11倍だとしている。
「STM32N6はブレークスルーになりうる製品。電池駆動の小型デバイスに高機能なAIを搭載したり、従来のAI搭載デバイスをより低コストかつ小型にしたりできるようになるだろう」(木村氏)
STM32N6は、STM32マイコンのポートフォリオ内では「STM32H7」などと並ぶハイパフォーマンスマイコンとして位置付けるものの、「AI専用ではない、あくまで汎用品だ」と強調する。「マイコンはあくまでも汎用品でなければならないからだ」(木村氏)。そのため、AIを搭載せずにSTM32N6を使うことももちろん可能だという。
STのグローバルの顧客の中でも、日本の顧客は特にエッジAIに積極的で引き合いが多いという。木村氏は「STとしても日本にかなり注目している。『技術大国』だと感じる」と話す。
一方で、日本特有の課題もある。製品化にあたっての品質への要求の厳しさだ。AIには明確な品質の認証基準がまだ存在しないため、安全性や仕様をいかに「保証」するかが障壁になることが多いという。その間にも、他国から新製品はリリースされていく。
木村氏は「『日本品質』と両立しながらも、もう少し柔軟に対応してもらえれば、世界に先駆けてどんどんAI搭載製品が出てくるのではないか」と期待を寄せる。「われわれは、急速に立ち上がると予想されるエッジAIの市場をリードするポジションを目指している。顧客の可能性を広げてビジネスを成長させていきたい」(木村氏)
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