図5は、2024年に日本専用として発売されたドローン本体99gの「HOVERAir X1 Smart」の様子である。電源アダプター、充電器、ドローン本体が梱包されており、コントローラー無しの製品となっている。ドローン本体のカメラが被写体を認識し、追従、ホバー、旋回など多彩な空撮を行う(弊社では分解だけでなく空撮業務にも使用中)。空撮データはスマートフォンに転送できる。図5左下に充電器の基板を示す。HOVERAir X1 Smartは中国ZEROZERO ROBOTICSの製品だ。今回報告している製品の前世代品は2023年に米国で発売されていて、2024年1月にラスベガスで開催された「CES 2024」のニューヨークタイムズ紙の「The Beat of CES 2024」に選出されている。
図6はHOVERAir X1 Smartの充電基板上のチップの様子である。中国半導体メーカー製のチップで構成されている。USB Power Deliveryチップ、システム制御マイコン、パワー半導体などが中国製だ。弊社では多くの充電器を分解し観察しているが、中国製比率はいずれの製品(日本メーカー製品含む)でも極めて高い。電池制御、電源制御は2020年以降、民生分野の製品では中国の独壇場になりつつある状況だ。
図7はHOVERAir X1 Smartの内部の様子である。モーター制御基板には中国製のモーター制御マイコン、駆動系のチップがびっしりと並んでいる。ドローンだけでなくお掃除ロボット、カメラ向けのジンバルなども同様に中国チップ群がずらりと並ぶ。
図8はHOVERAir X1 Smartの画像処理、通信、飛行制御基板の様子である。こちらには中国製チップは存在せず、米Qualcommのチップセット(プロセッサ+電源+通信)構成になっている。プロセッサは画像処理とAI処理機能を搭載している。HOVERAir X1 Smartは撮影カメラに加え、常時周囲の画像を捉えていて、衝突を回避しながら飛行する。着陸は手の平をかざせば認識し、ゆっくりと手の平に降りてくる。こうした処理もQualcommプロセッサが行っている。
図9は2023年10月に発売になった「Ray-ban Meta」の様子である。この製品の詳細は省略するが、こちらもQualcommのAR向けチップセットを採用している。多くの製品の内部で、中国半導体の比率が高まっている他、Qualcommのようなチップセット化(丸ごと化)もますます進んでいるのが分かるだろう。
次回は「Copilot+ PC」におけるQualcommのチップセットを報告したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.