大阪大学と東京工業大学は、新しいキラル半導体高分子を開発した。溶液を塗るだけで成膜でき、約70%という高い効率でスピン偏極電流を発生させることができる。
大阪大学大学院工学研究科のLi Shuang大学院生(博士後期課程)、石割文崇講師、佐伯昭紀教授および、東京工業大学理学院化学系の谷口耕治教授らによる研究グループは2024年9月、新しいキラル半導体高分子を開発したと発表した。溶液を塗るだけで成膜でき、約70%という高い効率でスピン偏極電流を発生させることができるという。
電子スピンの向きがそろったスピン偏極電流は、向きがそろっていないスピン非偏極電流に比べ、特殊な性質や機能を備えている。例えば、酸素発生や酸素還元を効率よく行える。また、円偏光を発生させる円偏光有機発光ダイオードの開発などにも応用できるという。
特に最近は、不斉誘起スピン偏極効果(CISS効果)が確認された。これは、希少元素を含まない有機分子でも、スピンコート法により成膜をすると、電流の電子スピンの向きがそろうということが分かった。このため、スピン偏極電流の発生に強磁性体や外部磁場が不要となり、新たな発生方法として注目されている。
研究グループは今回、高い電荷輸送特性を示すインダセノジチオフェン(IDT)骨格自体にキラリティを導入した「二面性キラルIDT骨格」を開発。これを含むキラルな半導体性の高分子「poly‐(S,S)‐ITD」と「poly‐(R,R)‐IDT」薄膜を、スピンコート法により比較的簡単に形成した。
作製した厚み約20nmの薄膜は、CISS効果によって70%近い偏りを持つスピン偏極電流を発生させる「スピンフィルター」として機能することが分かった。キラル半導体高分子でスピン偏極率が約70%という値は、これまでの最高クラスだという。これは、「導電性に直結する主鎖のIDT骨格自体がキラルである」ことに起因している可能性があるとみている。
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