データセンターの消費電力には、情報処理を担うサーバやストレージなど(IT機器)による消費電力のほかに、冷却サブシステムや電源ユニット、照明ユニットなどによる消費電力が存在する。
データセンターの電力効率は一般に、「電力使用効率(PUE: Power Usage Effectiveness)」で評価する。PUEの定義は「データセンター全体の消費電力/IT機器による消費電力」であり、普通は1.0を超える。そしてPUEの値に応じて「3.0:きわめて非効率(Very Inefficient)」から「1.05:きわめて効率が良い(Extremely Efficient)」まで6段階の評価が付く。
データセンターの品質基準を提供している民間団体Uptime Instituteの調査によると、2007年の時点でデータセンターのPUE(平均値)は2.50(非効率:Inefficient)だった。それが7年後の2014年には、1.65(「1.5の効率が良い:Efficient」と、「2.0の平均的:Average」の間)に向上しており、無駄な電力が大幅に削減されたことが分かる。ところが2018年に1.58に達した後は、PUEがほとんど改善されていない。最近のPUE(平均値)は2022年が1.55、2023年が1.58、2024年が1.56である。
この背景には、既存のデータセンター(施設レベル)の大半が汎用のコンピューティングとストレージを前提に冷却システムを構築してきたという事情がある。前回に述べたように、ラック当たりで10kWというのがコストの低い冷却システムの許容値だ。汎用コンピューティングには妥当でも、AIコンピューティングにとっては厳しい制約となる。
例えば2024年後半を前提にすると、2個のCPU(500W×2=1000W)と8個のGPU(1000W×8=8000W)を搭載するラックマウント型GPUサーバ(標準的な高さは8U)の最大消費電力は、CPUとGPUだけで9kWに達してしまう。実際には主記憶やストレージ、ネットワークスイッチなどが加わるので、10kWを軽く超える。冷却システムは強化せざるを得ず、冷却システムの消費電力とコストが増加する。
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