メディア

600℃でCOからカーボンブラックを大量に合成CO2排出量を従来の1/10に低減も(2/2 ページ)

» 2024年12月04日 13時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]
前のページへ 1|2       

コイル状に湾曲、「母材との接着強度が増す」効果も

 カーボンブラックは、熱反応で合成すると繊維状の構造となる。ところが、プラズマを作用させると、カーボンブラックと触媒の界面で引っ張りや圧縮などの応力が不均衡に発生し、コイル状に湾曲したカーボンブラックが選択的に生成されることも分かった。湾曲構造になることで、「比表面積の増大」や「母材との接着強度が増す」といった効果も期待できるとみている。

左は熱反応で合成した繊維状のカーボンブラック、右はプラズマ反応で選択的に合成されたコイル状のカーボンブラック 左は熱反応で合成した繊維状のカーボンブラック、右はプラズマ反応で選択的に合成されたコイル状のカーボンブラック[クリックで拡大] 出所:東京科学大学

 プラズマ反応で合成したコイル状カーボンブラックのラマン散乱スペクトルを観察すると、グラファイト構造を示す「G-bandピーク」や、グラファイトが層状になっていることを示す「2D-bandピーク」を確認できた。市販の高電気伝導性カーボンブラック(ファーネスブラック)では、グラファイト構造の欠陥を示す「D-bandピーク」が、「G-bandピーク」より大きく、コイル状カーボンブラックに比べるとグラファイト結晶サイズが小さいことを確認した。しかも、グラファイトの層状構造は形成されていないことも判明した。

 さらに研究グループは、コイル状カーボンブラックとファーネスブラックをそれぞれ用いたリチウムイオン電池用の電極を作成し、充放電特性を評価した。この結果、コイル状カーボンブラックを用いたリチウムイオン電池が高い性能となった。

ラマン散乱スペクトル。左はプラズマ反応で合成したコイル状カーボンブラック、右はファーネスブラック ラマン散乱スペクトル。左はプラズマ反応で合成したコイル状カーボンブラック、右はファーネスブラック[クリックで拡大] 出所:東京科学大学

 研究グループは今後、CO2電気分解反応などと組み合わせてCO2-to-Cを実現するプロセスを開発していく。その上で、多量に排出されるCO2をカーボンブラックに変換できる大型装置の開発や、合成されたカーボンブラックの需要開拓に取り組んでいく。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.