NXP Semiconductorsは、さまざまなゾーンSDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)アーキテクチャに対応できる車載マイクロコントローラ(MCU)「S32K5ファミリー」を発表した。
NXP Semiconductorsは2025年3月13日、さまざまなゾーンSDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)アーキテクチャに対応できる車載マイクロコントローラ(MCU)「S32K5ファミリー」を発表した。2025年第3四半期(7〜9月)より、主要な顧客に対しサンプル品の供給を始める。
多くの自動車メーカーは、ゾーンアーキテクチャを採用しているが、そのアプローチはメーカーによってそれぞれ異なるという。さまざまなゾーンアーキテクチャに共通する課題としてNXPは5つ挙げた。「ワークロードの多様性」や「重要度の混在」「通信のレイテンシ」「保守性とセキュリティ」そして、「ソフトウェアの増加」である。
こうした課題に対応するのがS32K5である。S32K5ファミリーは、16nm FinFETプロセスを用いて製造するMCUで、自動車向けとして初めてMRAM(磁気抵抗メモリ)をオンチップで搭載したという。
例えば、「ワークロードの多様性」に対応するため、ヘテロジニアスなコンピューティングによるMCUアーキテクチャとした。具体的には、制御向けCPUコアとして動作周波数が最大800MHzの「Arm Cortex-M7」を採用した。また、演算向けには800MHz動作の「Arm Cortex-R52」を、ローパワーエンジンとして200MHz動作の「Arm Cortex-M4」を搭載。さらに、MLアクセラレータ専用の「eIQ Neutron NPU」やDSPコアなどを集積した。
「通信のレイテンシ」に対しては、イーサネットスイッチやCANアクセラレータを搭載するなどして、高速性と柔軟性を両立させた。「保守性とセキュリティ」では、MRAMを採用し最大8.8Mバイト/秒の高速書き込みを実現した。従来の組み込みフラッシュメモリに比べ、書き込み速度は15倍以上も速いという。最大100万回の書き込み回数と、20年のデータ保持も可能とした。セキュリティに関しては、ポスト量子暗号(PQC)機能を含むNXPのセキュリティアクセラレータと組み合わせたことで、自動車に新たな機能を実装する場合も安全にシステム変更を行うことができる。
さらに、車載ソフトウェアプラットフォームである「NXP CoreRideプラットフォーム」を活用すれば、次世代SDVや電動車の車両開発における複雑さを低減し、市場投入までの期間を短縮できる。NXP CoreRideプラットフォームは、NXP製の車載プロセッサファミリー「S32」やネットワーク製品、パワーマネジメントICと、ElektrobitやGreen Hills Software、Sonatusといったパートナー企業のソフトウェアを事前に統合した開発環境である。さまざまなアーキテクチャの車両開発に必要な構成要素が含まれており、1つのプラットフォームでよりシンプルに行うことができる。
NXPはS32として、5nm技術を用いた「S32N」から、90nm技術を用いた「S32K1」まで、用途に適した製品を幅広く用意している。新たにS32K5ファミリーを追加したことで拡張性をさらに高めた。
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