カメラと制御機器が直接対話して学習! 「AI-to-AI通信技術」 : 搭載したAIレベルで有機的に連携
東京大学は、「AI-to-AI通信技術」を初めて開発した。この技術を用いると、カメラや制御機器などの電子機器に搭載されたAI同士が直接対話し、協調学習することが可能となる。
東京大学大学院情報理工学系研究科の落合秀也准教授らによる研究チームは2025年5月、「AI-to-AI通信技術」を初めて開発したと発表した。この技術を用いると、カメラや制御機器などの電子機器に搭載されたAI同士が直接対話し、協調学習することが可能となる。
AI半導体の進化によって、さまざまな電子機器に学習機能を備えたAIが搭載されようとしている。ただ、これまでのAIは単一の電子機器内で活用されるのが一般的であった。これに対し今後は、複数の電子機器がAIレベルで有機的に連携し、自律的に高度な機能を実現できる可能性があるという。
研究チームは今回、MITが開発した「Split Learning」を参考にして、AI-to-AI通信技術を独自に開発した。実験では、天井に設置したカメラによって室内を監視し、4種類の照明を自動で制御する「Logic Free Building Automation」システムに、開発したAI-to-AI通信技術を適用した。
この結果、Logic Free Building Automationは、ユーザーが行う壁スイッチの操作を教師信号として学習し、最適な制御方法を自動的に獲得できることを実証した。AI-to-AI通信技術が普及すれば、将来的にはA製の天井カメラとB製の空調機など、異なるメーカーの電子機器同士がシームレスに協調して、快適な室内環境を提供できるようになるという。
カメラに内蔵されたAIと制御システムに搭載されたAIがAI-to-AI通信により協調学習して、「現場の要求の応える制御」を獲得する様子[クリックで拡大] 出所:東京大学
工学部2号館に整備された次世代ユビキタス空間の実験テストベッド[クリックで拡大] 出所:東京大学
チップに「水路」を作り冷却液を流し込む 高効率に放熱
東京大学生産技術研究所は、AIチップや電子機器の性能向上や省エネ化を可能にする「高効率放熱技術」を開発した。特殊な三次元マイクロ流路構造を用いて開発した水冷システムは、極めて高い冷却効率と安定性を実現した。
パワー半導体のスイッチング損失を自動低減する駆動IC 対応品種が1万超に
東京大学は2023年に、パワー半導体のスイッチング損失を自動低減するゲート駆動ICチップを開発した。今回、同技術を4端子パッケージと3端子パッケージの両方に適用できるようにした。これにより、対応する品種の数は2390品種から1万種以上に、大幅に増加した。
熱電モジュール向け新材料「熱電永久磁石」を開発
物質・材料研究機構(NIMS)は東京大学や名古屋大学と共同で、横型熱電変換性能が極めて高い新材料「熱電永久磁石」を開発した。この材料を用いて試作した熱電モジュールは、「横型モジュールとして世界最高の電力密度を実現した」という。
一次元構造のペロブスカイト結晶で大きな光起電力
早稲田大学と東京大学、筑波大学による共同研究グループは、一次元らせん構造のハロゲン化鉛ペロブスカイト結晶で、15Vを超えるバルク光起電力を発現させることに成功した。発生する電圧は、太陽光照射下における既存のペロブスカイト太陽電池の10倍以上だという。
磁気センサーの磁気分解能を従来の1000倍以上に
アルプスアルパインは東京大学の研究グループと、トポロジカル材料を用いた磁気センサーの開発を始めた。両者の技術や人材を融合することで、従来に比べ1000倍以上の磁気分解能を持つ磁気センサーの開発が可能とみている。
電源不要で薄型軽量のARメガネを実現する新技術
東京大学と大阪大学、クラスターおよび、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンによる共同研究グループは、電源が不要で薄型軽量を可能にする拡張現実(AR)ディスプレイ技術を用いた「ARメガネ向け薄型受光系」を開発した。
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