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150GHz帯対応でも超小型 アンテナ一体型無線機モジュール6G端末で大容量無線通信が可能に

東京科学大学は、情報通信研究機構(NICT)などと共同で、超小型かつ低消費電力を実現した150GHz帯端末向け「アンテナ一体型無線機モジュール」を開発した。これを6G端末に実装すれば、通信速度や容量をさらに向上させることができるという。

» 2025年06月20日 09時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

送受一体の無線機回路を新たに設計、4系統を1チップに集積

 東京科学大学工学院電気電子系の岡田健一教授らによる研究チームは2025年6月、情報通信研究機構(NICT)などと共同で、超小型かつ低消費電力を実現した150GHz帯端末向け「アンテナ一体型無線機モジュール」を開発したと発表した。これを6G端末に実装すれば、通信速度や容量をさらに向上させることができるという。

 6Gでは、より広い帯域を利用できるサブテラヘルツ帯の活用が計画されている。ところが、5Gで用いられているミリ波帯などに比べ、信号損失が大きくなったり、無線送受信器が複雑で大型化したり、製造コストが増大したりするなど、課題もあった。 

 そこで研究チームは、6G端末に向けて150GHz帯のAiP(アンテナインパッケージ)フェーズドアレイ無線機モジュールを開発した。このモジュールは、多層基板の表面に新開発の無線機ICを2個実装し、基板の端面に8個のアレイアンテナを形成した構造となっている。

 特に今回は、ポスト壁導波路を用いたエンドファイア型アンテナにすることで、モジュール内の伝送距離を抑え損失を低減した。このモジュールは1個で8×1のフェーズドアレイ動作に対応できる。このモジュールを複数枚積み重ねれば、2次元のフェーズドアレイ動作が可能となる。

開発した150GHz帯の超小型低消費電力AiPフェーズドアレイ無線機モジュールの外観[クリックで拡大] 出所:東京科学大学 開発した150GHz帯の超小型低消費電力AiPフェーズドアレイ無線機モジュールの外観[クリックで拡大] 出所:東京科学大学
左が従来構造、右が開発した構造のAiPモジュール断面 左が従来構造、右が開発した構造のAiPモジュール断面[クリックで拡大] 出所:東京科学大学

 今回は、モジュールに搭載する150GHz帯フェーズドアレイ無線機ICも新たに開発した。送受一体の無線機回路を新たに設計することで、4.0×3.0mmというチップサイズを実現した。このICには4系統の送受信回路を集積しており、4個のアンテナを駆動できる。製造は最小配線半ピッチ65nmのシリコンCMOSプロセスを用いた。試作したICは、142〜164GHzで動作することを確認。1素子当たりの消費電力は送信モードで150mW、受信モードで93mWとなった。

 研究チームは開発したAiPモジュールを用い、実験室内で実際に電波を飛ばして測定を行った。この結果、30cmの距離で最大データ転送速度は送信時56Gビット/秒、受信時40Gビット/秒となった。5mの距離ではQPSK変調時に20Gビット/秒の転送速度を達成した。

 さらに、フェーズドアレイによる−45度から+45度のビーム掃引動作も確認。サイドローブの抑圧比は約−10dBであった。EIRP(等価等方放射電力)は154GHzで25.7dBmとなった。モジュールにおける単位アンテナ開口面積当たりのEIRPは10.4dBmであり、極めて高い電力密度を達成した。

150GHz帯フェーズドアレイ無線機ICのチップ写真 150GHz帯フェーズドアレイ無線機ICのチップ写真[クリックで拡大] 出所:東京科学大学
6G向け無線機のアンテナ開口面積に対する電力密度 6G向け無線機のアンテナ開口面積に対する電力密度[クリックで拡大] 出所:東京科学大学

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