同社は3年前に、電気自動車(EV)市場の需要に対応すべく最大50億米ドルを投じるという野心的な計画を立てていた。しかし現在、EV関連の売上高が予測を下回っていることから、経営陣の刷新や人員削減、資本投資の大幅な削減などにより、黒字転換を目指しているところだ。
同社は、2026年5月に返済期限を迎える5億7500万米ドルの転換社債を保有しているという。
WolfspeedのCEOであるRobert Feurle氏は用意した声明の中で「バランスシートの強化と資本構造の適正化を実現可能な選択肢について検討した結果、このような戦略的ステップを踏むという決断に至ったのは、未来に向けてWolfspeedが可能な限り最良の位置付けを確保できると考えたからだ」と述べている。
同社は再建支援契約に基づき、既存の転換社債保有者による全面的な支援を受け、新規資金調達において、第二順位担保権付(Second Lien)転換社債の形で2億7500万米ドルを受領することになる。またこの再建支援契約により、既存の52億米ドルの転換社債とルネサスからの既存の融資を、5億米ドルの新規社債と95%の新規普通株式に交換することが可能だという。
ルネサスはこの取引きに伴い、損失の計上を見込んでいるという。同社は、2025年6月30日を末日とする6カ月の連結決算において、約2500億円の損失を計上する可能性があるとしている。
ルネサスは2023年7月に、WolfspeedとSiCウエハー供給契約を締結し、ルネサスの米国完全子会社を介してWolfspeedに20億米ドルの預託金を提供した。その後、両社は2024年10月に、預託金の未払い元本総額を20.62億米ドルに増額させている。
ルネサスは、再建支援契約に基づき、この預託金をWolfspeedの転換社債や普通株式、新株予約権へと転換することに合意した。
ルネサスはEE Timesの取材の中で「この合意により、Wolfspeedが事業を継続し、財務構造を強化することができると確信している」と述べている。また同社は「ルネサスは現在のところ、主導的な役割を担ったり積極的に関与していくことは想定していない。ガバナンスの観点から、Wolfspeedの取締役会役員をルネサスから1人任命する予定だ」と語った。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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