PCIMの会場では今回、J3シリーズの基本構成要素であるパワー半導体モジュールとフットプリント互換の「J3シリーズ SiCリレーモジュール」を初公開していた。
同製品はパワーモジュールのJ3シリーズと同様に、低損失のトレンチ型SiC MOSFETおよび同じパッケージ設計や補助機能を備えた「小型で耐久性が高く、寿命も長いなど、多くのな利点がある」(説明担当者)1300V SiC J3リレーモジュールだ。J3-T-PMと同じフットプリントであることから、メインのインバーターモジュールのすぐ隣に配置が可能になる。
三菱電機はこのJ3シリーズ SiCリレーによって、車載バッテリー遮断ユニット向けで高効率なソリッドステートスイッチングソリューションを可能にし、システムの信頼性と性能を向上を実現するとしている。
またxEV用のSiCでは、三菱電機は2024年11月にxEV用SiC-MOSFETをベアダイでのサンプル提供開始も発表していて、「標準仕様のパワー半導体チップを市場に供給することで、xEV市場拡大に向け多様化するインバーターに対応し、xEVの普及に貢献する」としている。
なお、SiCパワー半導体市場は中国勢の台頭などによって価格競争の激化が指摘されるが、三菱電機は2025年5月に開催した「三菱電機 IR Day 2025」において、米国Coherentと8インチSiC基板の共同開発を進めていることを挙げ、「当社のプロセス技術とCoherentの基板技術をかけあわせ、より付加価値の高い製品を目指している。すでに中国企業と同等レベルのコスト競争力で、かつ高品質な製品を供給できる見込みが立っている」(同社半導体・デバイス事業本部長の竹見政義氏)と強調していた。
また、ハイエンドを狙い、ローエンドは中国企業に任せるといったすみ分けの可能性についての質問に対し、竹見氏は「ハイエンド領域だけを追求しても数を確保できないため、ある程度コストで勝負しなければならない領域にも対応していく必要がある。SiCパワー半導体は、まずトータルコストの中で最も高い基板のコストをCoherentと協力して下げていく。次にウエハープロセスに関して熊本県泗水地区の新工場を省エネ化、フルオートメーション化することで製造コストを下げ、中国企業に対抗していく。一方で、低コスト領域だけを追求することは危険であり、ハイエンド領域で利益を追求していくことと併せ両面で取り組んでいく」と語っていた。
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