TDKは、車載PoC(Power over Coax)用巻線インダクター「ADL4524VLシリーズ」を発表した。広い周波数帯域で高いインピーダンス特性を確保していて、従来2〜3個のインダクターを組み合わせていたPoCフィルター用途に1個で対応できる。使用可能範囲は要求の多い300〜500mAで、3G〜12Gbpsの通信に対応する。
TDKは2025年7月29日、車載PoC(Power over Coax)用巻線インダクター「ADL4524VLシリーズ」を発表した。広い周波数帯域で高いインピーダンス特性を確保していて、従来2〜3個のインダクターを組み合わせていたPoCフィルター用途に1個で対応できる。使用可能範囲は要求の多い300〜500mAで、3G〜12Gbpsの通信に対応する。
自動運転技術の進展に伴って自動車へのカメラやセンサーの搭載数が増加し、ワイヤハーネスの重量増が課題となっている。対策として、従来別々のケーブルで伝送していた信号と電力を同軸ケーブルに重畳して伝送することで配線本数を従来の半分にし、ワイヤハーネスの重量を削減するPoC伝送が活用されている。
PoC伝送回路には、電力側への信号の流入を防ぐためのフィルターが必要になる。フィルターには広い周波数帯域で高いインピーダンス特性が求められるので、2〜3個のインダクターを直列に接続して構成することが一般的だ。複数個のインダクターを組み合わせる際は、回路設計の負担や基板の消費電力が増加することが新たな課題となっていた。
ADL4524VLシリーズは、10M〜1GHzの広い周波数帯域で高いインピーダンス特性を実現していて、2〜3個のインダクターを1個で置き換えられる製品だ。製品サイズは4.5×2.4×2.6mmで、3個のインダクターを使用した場合と比べて実装面積を約60%削減できる。直流抵抗を約50%低減するので、消費電力の低減にも貢献する。
低周波側では直流電流に対してインピーダンス特性の低下が少ないフェライト材料を新規開発し、高周波側では容量成分の発生を抑えた巻線仕様を採用することで、低周波側/高周波側の両方で高いインピーダンス特性を確保したという。TDKは新規開発した材料について「小型化の要求が高まる中で、幅広い製品に適用できる材料だ」としている。
125℃の高温環境に対応し、動作温度範囲は最大155℃。高温対応のコア材料や高信頼性の金属端子、レーザーによる継線結合、高耐熱被膜ワイヤを採用して耐熱性/耐熱衝撃性を高めていて、小型カメラなど放熱性の低いアプリケーションにも対応できる。
同製品は、低周波側で特に高いインピーダンス特性を実現した「ADL4524VL-180M-TL000」をGMSL(Gigabit Multimedia Serial Link)向けに、高周波側で特に高いインピーダンス特性を実現した「ADL4524VL-100M-TL000」をFPD-Link向けに提供する。
同製品は、TDKエレクトロニクスファクトリーズ酒田工場(山形県酒田市)で既に量産を開始している。
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