一方、中国最大のクラウドコンピューティング企業であるAlibabaは、NVIDIAの中国における規制障壁によって生じた空白を埋めるべく、新たなAIチップを開発した。The Wall Street Journalによると、同チップは従来品よりも汎用性が高く、最先端チップを必要としない幅広いAI推論タスクに対応することを目的としているという。
Alibabaは公式発表を行っていないが、米国EE Timesの情報筋によると、同社のチップコアはRISC-Vアーキテクチャを採用している。これはAlibabaが長年投資を続けてきたオープンソースプラットフォームであり、中国で広く支持されている。
重要なのは、AlibabaのチップはNVIDIAのCUDAプラットフォームとの互換性を持つ可能性があるという点だ。これによってエンジニアは既存プログラムを流用できる。これは、高性能であるにもかかわらずNVIDIAエコシステムとシームレスに統合できないHuaweiのAscendチップとは対照的だ。
Cambriconや上海のMetaXといった中国企業が著しい進歩を遂げているにもかかわらず、業界関係者は、特にAIモデルのトレーニングという要求の厳しい作業において、中国が最先端の米国製品に匹敵するチップを生産するにはまだ程遠いと指摘している。
中国の工場は、米国による最先端チップ製造技術の制限に直面していて、MetaXなどの一部企業は、性能低下を補うため、旧世代技術を採用し小型チップを組み合わせる対応を取っている。
中国政府は、2025年1月に発表した84億米ドルのAI投資基金を含む、自給自足型AIサプライチェーンへの積極的な投資を進めている。
とはいえ、中国が国内の有力企業育成と外国技術への依存低減を断固として推進する中、世界のAI半導体市場は市場原理と地政学的要請の両方に駆り立てられ、変革期を迎えている。
Cambriconのような企業の台頭は、既存プレイヤーに挑戦しAIチップ製造の未来を再構築しようとする中国の野心を浮き彫りにしている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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